■ アンモナイトの美と科学
+■アンモナイトはどのような生物であったか
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近年、自然史系博物館では、利用者の自然史への探求心を育むきっかけをつくり博物館の機能を高めるため様々な普及事業や展示の工夫を行っています。
これらの自然史系博物館は、自然史資料から情報の面白さを引き出す方法を熟知した研究者と多彩な展示手法を熟知した展示専門家がそれぞれの専門性をいかしてより学習支援効果の高い展示表現を開発する必要があります。
上記のような考えのもと、独立行政法人国立科学博物館と株式会社乃村工藝社は、平成13年度にアンモナイトを素材にした学習支援効果の高い展示物の開発を試みました。
この報告書は、開発の経緯、意義、利用者に対する展示評価についてまとめたものです。


共同研究開発展示
独立行政法人国立科学博物館は、民間等外部機関との共同研究を進めています。この展示は、株式会社乃村工藝社との共同研究「科学系博物館における学習支援効果の高い展示物の開発と評価」を実施し、開発したものです。


開発のポイント
「アンモナイトは、生きものである」ということを理解しやすく伝えることを目的とし、次の4つの点をポイントとしました。
○アンモナイト化石から、アンモナイトが生きていた時の姿を復元しました。
○文字や図解による解説をなくし、見てわかるようにしました。
○化石の標本に直接さわってみることができるようにしました。
○一定期間展示し、アンケート等の調査をもとに評価をしたうえで改良しました。


 
 
復元の根拠
 アンモナイトは一見するとサザエやカタツムリの殻に似ていますが、分類学的には、これらよりもイカやオウムガイに近い仲間です。アンモナイトの軟体部の化石はまだ発見されていませんが、イカやオウムガイに似た軟体部を持っていたと想像されます。
 ここでは、アンモナイトはイカに最も近縁であるという学説に基づき、腕の数をイカと同じ10本に復元しました。また、アンモナイトの殻の表面には、放射状や同心円状の色模様の痕跡が見つかることもあるので、復元模型の殻表面にも同心円状の色模様を復元しました。
 アンモナイトの殻の最後の反巻きから一巻の部分は比較的壊れやすく、この標本でも最後の一巻部分が壊れて無くなっています。生きているときの殻の大きさは、この標本よりも大きかったといえます。

標本について
学名:メソプゾシアの一種(Mesopuzosia sp.)
産地:北海道夕張地域産
時代:中生代白亜紀後期(約8800万年前)
 
展示のシステム
光を透過させることと、反射させることの2つの性質をあわせ持ったハーフミラーという鏡を利用しています。照明を変化させることにより、鏡で区切られた手前にある化石の像を、奥にある復元模型と重ね合わせて見る装置です。化石と復元模型との関係が立体的に理解でき、また実物化石にふれることもできます。




 


第一部 化石芸術  バーチャル展示室 B2F      第二部 アンモナイトの美と科学  バーチャル展示室 B3F