日本で起こる地震

2011年3月11日(金)に三陸沖を震源としてマグニチュード9.0という日本の観測史上最大規模の地震が発生しました。そして、大変大きな津波が発生しました。これらによって、全く予想の出来なかった大きな被害がもたらされました。東日本大震災等で被災された皆様には心よりお見舞い申し上げます。

今回のホットニュースでは、これまで明らかにされている地震の歴史やメカニズムについて紹介し、今回の大地震をきっかけに、あらためて地震という現象について、そして日本列島という場所の特徴を含めて科学的に解説します。

地震国・日本

実は、日本は世界の地震の約10 %が集中する「地震大国」です。その宿命は、この国及び周辺で「北米プレート」「ユーラシアプレート」「太平洋プレート」「フィリピン海プレート」と、硬い岩石の板である4つのプレートがせめぎ合っていることが原因です(図1)。海洋プレートが大陸プレートに沈み込んでいる「沈み込み帯」で、次の「地震とは?---どうして起こるのか」のページで説明するように様々なタイプの地震が起こります。近年では中越地震や兵庫県南部地震(阪神大震災)など、いわゆる「直下型地震」による災害が多かったのですが、最も警戒されていたのは「東海地震」と呼ばれる、静岡沖の南海トラフ(ユーラシアプレートにフィリピン海プレートが沈み込んでいる所)で近々起きるであろうと考えられているプレート境界型の地震です。前回は太平洋戦争末期の1944年にM7.9~8.0の地震を起こしています。また、東海~東南海~南海地震はしばしば連動して発生し、ほぼ同時に発生して巨大地震になる事も想定されていました。この地域で過去発生した巨大地震に関しては、明治以前には長らく政治の中心であった京都に近いこともあり、古文書の記録としてほぼ残っています。そのために地震発生の周期を見積もる上でも地震予知の対象としやすく、東海地震については、事前に発生の確率や規模を予測しやすい」とされています。

日本列島周辺のプレート境界

しかし今回は関東~東北という場所で、想定外のM9.0という大きさの地震が発生してしまいました。しかも、東海~東南海~南海で想定されていた巨大地震の連鎖が三陸沖~宮城沖~茨城沖で起き、特に沿岸を襲った津波は正に未曾有の災害をもたらしました。古文書によると、西暦869年に起きた地震により、多賀城まで津波が押し寄せ約1000人が溺死した、という記録があります(「貞観<じょうがん>地震」)。これが「前回の地震」であったとすると、今回の地震は正しく「1000年に一度の災害」と言えるかもしれません。実は、この「貞観地震」については、近年その重要性が注目されつつありました。堆積物などの研究の結果、巨大地震の連鎖により東北地方の広範囲に津波が押し寄せた可能性があることが分かり、2007年には新聞でも報道されていました。その成果が生かされる前に、今回の震災は襲ってきたことになります。

地震とは? ─ どうして起こるのか

プレート境界

かつて、かの武田信玄が、「動かざる事山の如し」と言った(元ネタは孫子らしいが)ように、昔から人にとって山を含む大地が動くということは通常では有り得ない事であり、同時にとても恐ろしい事でした。そのため、世界でも比較的古い歴史を持っている日本では、過去に起こった大きな地震は古文書に記録されています。記録に残っている日本最古の地震は、「古事記」に記録されている西暦416年のものとされています。

地震は、「断層がずれる」ことにより発生する振動であり、それが岩盤中を伝わる事によって周囲をゆらします。しかし、「地震の原因は断層のずれである」という説が定説として根付いたのは1950年前後のことです。その後、プレートテクトニクス説などを取り入れ、巨大地震が地球規模の運動の結果であることが明らかになってきました。そういった意味では、現代地震学は若い学問であると言えると思います。

「プレート境界」で多発する地震

地球の表面は、「プレート」と呼ばれる十数枚の硬い岩石の板で覆われています(図2)。それらは年間数cmの速さで動いており、一つのプレートが他のプレートの下に沈み込む場所(沈み込み帯)には、様々な力がかかることになります。そして、一定以上の力が溜まった時、断層がずれ、地震が発生します。プレートが形成される場所(中央海嶺)でも地震は発生しますが、沈み込み帯の方が圧倒的に発生数は多いです(図3)。
沈み込み帯で起こる地震には、幾つかのタイプがあります(図4)。

①プレート境界の地震
片方のプレートが沈み込む際に、もう片方のプレートを巻き込むように変形させます。この変形が限界に達した時に、一気に戻ることにより発生する地震です。今回の地震は、このタイプの巨大地震が3つ連続して発生したものと考えられています。

②沈み込む前のプレート内の地震
沈み込む前のプレートには、沈み込みに伴う変形による引っ張りの力がかかっています。この力によってプレートが「たわんで」割れ、地震が起こります。

③沈み込んだプレート内の地震
沈み込んでしまったプレートが、重力により時々「割れて」地震を起こす事があります。このタイプの地震は地下における沈み込んだプレートの存在を現します(この活発な地震の震源の領域を「和達<わだち>・ベニオフ面」といいます)。しかし、深さ600 kmを超えると、地球内部の熱により沈み込んだプレートが「柔らかく」なるため、このタイプの地震も発生しなくなります。

④陸域の地震
いわゆる「直下型地震」と呼ばれるのはこのタイプです。1995年の神戸の震災は記憶に新しいと思います。沈み込むプレートに押されて、陸側のプレートが割れる事によって発生する地震です。震源が地表に近いため、都市の直下で起こると、小さいエネルギーでも大きな被害を及ぼす事があります。

地震の大きさ ─ 震度とマグニチュード

地震の度に出てくる言葉で、しばしば混同されがちなのが「震度」と「マグニチュード」です。端的に表現すると、「震度」はある位置でのゆれの大きさ、マグニチュードは地震そのものが持つエネルギーの大きさを示します。

「震度」とは、実は日本独自の基準で、正確には「気象庁震度階級」と呼ばれます。1990年代中盤位までは気象台の職員の体感による判定でしたが、現在では完全に「震度計」による測定に一本化されています。階級は震度0から震度7までの10段階(震度5と6が強弱に分けられたため)で現されています。世界的には他の震度階級として「メルカリ震度階級」などがあります。これら震度階級は、ある観測点での「ゆれの大きさ」を示します。

それに対して「マグニチュード」は「地震の(発した)エネルギーの程度」を示します。元々の定義は「震源から100 km離れた地点での標準地震計の最大振幅をμm(mmの1000分の1)単位で測定し、それを常用対数で表したもの」です。これだけ読んでも何が何だか解りませんが、マグニチュードが2増えると地震のエネルギーは1000倍になります。このマグニチュードも幾つかの種類があり、日本で一般的に用いられているのは「気象庁マグニチュード」と呼ばれるものです。

よく用いられる例えとして、電球があります。ここに100 Wの電球があるとします。この100 Wという「電球の持つ明るさ」が、地震でいう「マグニチュード」に当たります。ところが、この同じ電球を近くで見る場合と遠くから見る場合とでは「見かけの明るさ」が異なります。これが「震度」に当たります。同じ距離でも電球が500 Wになれば、遠くでも非常に明るく感じますし、近くでは直視できない位に眩しくなるでしょう。大きな「マグニチュード」の地震がおきれば、近くではとんでもなく大きな「震度」となるでしょうし、遠くでも比較的大きな「震度」となるでしょう。

津波

明治丙申三陸大海嘯 (かいしょう)之實況
海底の変形=津波の原因

一般的な津波は、断層の活動で海底が盛り上がる(または陥没する)動きが海面に伝わる事によって起こります。逆に言うと、いくら大きな地震が起きても、海底の変形が起きなければ津波は起きません。また、地震以外の津波の原因として、巨大隕石の衝突や、地滑り・山体崩壊によって起こるものもあるとされます。地震による津波に関する記録として、津波の様子を描いた絵もあります。

津波の速さ

よくニュースで「津波は速い」と言われますが、津波の速さは物理学的には「重力加速度と水深の積の平方根」で現されます。具体的には、平均水深5000 mの太平洋では
(9.8[m/s/s]×5000 [m])^(1/2) = 221.4 [m/s] = 796.9 [km/s]
となり、時速約800キロと、ジェット旅客機に匹敵する速さになります。1960年にチリで起こった地震による津波は、一晩で太平洋を横断し、日本にも被害を及ぼしました。今回の津波もハワイやアメリカ西海岸に到達したことが報道されました。

津波の高さ

「そんな津波が太平洋を渡ったら、太平洋上の船は大変ではないか」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。外洋での津波は非常に波長が長い波になり高さもなだらかになります。もし津波が通過したとしてもほとんど感じられないくらいです。しかし、そんな津波が沿岸部の水深の浅い所になると、急激に高さを増します。例えば水深50 mを上記の式に当てはめてみると、津波の速さは1/10の79.6[km/s]になり、津波のエネルギーが「渋滞」を起こした結果として高い波になります。
また、湾の形は大きな影響があります。「湾口が広く奥が狭い湾」は、広い湾口から入った津波のエネルギーが奥に行くに従って集中し、高い津波になります。リアス式海岸の湾などはこの典型です。逆に、「湾口が狭く奥が広い湾」は湾口から入った津波のエネルギーが奥で拡散するために、津波の被害を受けにくいと言われます。東京湾などがその典型です。

津波の影響

今回の地震では、多くの建物が津波で持ち去られ、被害を受けた町は、以前とは全く異なる面影となってしまいました。津波のエネルギーは大変大きな物だったことが伺えます。

初めの章でも記述しましたが、今回の震災により、数十年~数百年レベルの周期の地震の予知では不十分で、千年単位の周期で起こる巨大地震を予知するためには、古文書を超える古い「記録」を読み解く事が不可欠であると言えるでしょう。そしてその地震に伴った津波などの現象の情報をより検討する必要があるでしょう。
今後、地質学、地震学、防災学などの手法を取り入れながら、過去の巨大地震を捉え、今後の予知や防災に役立てようとする動きが活発になるであろうと思います。

監修・協力  地学研究部 堤 之恭

最新の記事