研究活動

調査研究

国立科学博物館は1877年に開館して以来、国立の唯一の総合科学博物館として、自然史及び科学技術史に関する研究を行ってきました。当館の研究は地球と生命の歴史、生物と地球環境の多様性を解明し、科学技術の発展過程を明らかにすることに重点を置いています。そのため最先端の方法を用いた研究を行うとともに、標本や資料に基づく実証的かつ継続的な研究を平行して推進しています。また、当館は日本及びアジア地域における研究センターとして、様々な研究機関と協力しながらプロジェクト型研究を進めています。

さらに、標本資料のナショナルコレクション構築を推進するため、日本やアジア地域を始めとして、世界各地から標本収集を行っています。

また、当館はGBIF(地球規模生物多様性情報機構)の国内情報拠点として標本情報を世界に向けて発信しています。日本の科学技術史に関するデータベース構築も進め、情報発信を推進しています。さらに、国内の科学系博物館のネットワーク化を促進するため、サイエンスミュージアムネット事業を進めています。このような活動を推進するため、当館の研究組織は5研究部(動物研究部、植物研究部、地学研究部、人類研究部、理学研究部)、2園(筑波実験植物園、附属自然教育園)、3センター(標本資料センター、分子生物多様性研究資料センター、産業技術史資料情報センター)および昭和記念筑波研究資料館から構成されています。

調査研究

基盤研究

標本資料に基づく実証的・継続的な
基盤研究の推進
自然史に関する科学その他の自然科学及びその応用の研究における世界の中核拠点になることを目指し、研究に必要な標本資料を収集・充実し、それに基づき組織的に目標を掲げて行う実証的・継続的な研究として基盤研究を実施する。

動物研究分野

X線マイクロCTや次世代シーケンサーなどを使用した研究手法を取り入れ、形態学や遺伝子解析に基づく分類学、系統解析を推進し、生物多様性の保全を目的とした日本及びその周辺地域・海域における原生生物と動物のインベントリーの構築及び多様性創出機構の解明を行う。あわせて、各分類群におけるインベントリーの達成度を評価する。同時に、生物多様性に関する知見の充実や種の保全につながるよう、それぞれの種が置かれている現状と時系列的変遷を環境との関連で解明する。

動物研究分野

植物研究分野

動物以外のすべての真核生物と一部の原核生物の標本・資料を収集するとともに、既存の標本・資料と筑波実験植物園に維持されている生態系から得られる資料・情報を活用しつつ、形態、構造、分布、ゲノム、二次代謝産物、生物間相互作用等を解析し、維管束植物、コケ類、藻類、地衣類、菌類を対象とした分類・進化・生態等の自然史研究を実施する。さらにこれらの成果として得られた情報の統合・公開を推進し、生物多様性の保全と持続利用に寄与する。

植物研究分野

地学研究分野

日本列島及び地質的に対比的な地域において、地質調査及び岩石・鉱物標本の収集と登録・記載を行う。岩石の組織観察、全岩及び局所化学分析、精密結晶構造解析、並びに放射性同位体を用いた年代測定により岩石・鉱物の成因と分化を明らかにし、日本列島の形成過程と地球深部構造の関連を考察する。また、アジアの顕生代無脊椎動物の時空分布の解析、国内外の新生代湖沼珪藻の生物地理の変遷や形態の生物学的理解、日本海周辺海域の微化石群集と地球化学分析に基づく気候・海洋環境変動の解明を試みる。中生代爬虫類・新生代哺乳類を対象とし、形態を基礎とした分類学、生物地理学、飼育実験、比較発生学、地球化学の手法を用いて、適応進化史、生活史、生息環境、食性の復元を行う。東アジアの新生代被子植物を対象に分類学的・古生態学的検討を行い、生物地理の変遷史を明らかにする。

地学研究分野

人類研究分野

沖縄本島のサキタリ洞などの旧石器遺跡での発掘調査を行い、旧石器時代人骨の発掘とその形態学的な研究を行う。
古人骨のゲノム研究では、縄文を中心とした列島各地の人骨からDNAを抽出し、次世代シークエンサを用いた網羅的なDNA分析を行う。特にミトコンドリアDNAに関しては全塩基配列を決定し、系統分析を行う。列島の各時代・地域のゲノムデータを蓄積することで集団の形成に関する新たなシナリオの完成を目指す。また、旧石器人骨に関しては、CTスキャンと3Dプリンタを用いた研究を進め、形態研究からも従来説の再検討を行う。さらに、発掘された多数の江戸時代人骨の病変やストレスマーカー、死亡年齢を調べることで、この時代の人びとの健康状態や公衆衛生面に関するデータを集め、健康面での実体を明らかにする。

人類研究分野

理学研究分野

今後の日本の科学技術の発展を考える基盤を提供するため、科学技術史及び宇宙・地球史双方の資料を継続して収集するとともに、これまで蓄積してきた資料について、3次元データ化等を進め、復元や複製により博物館活動に広く活用できるようにする。また、博物館や研究機関等に残された過去の観測データを収集して現代的な手法で解析する。さらに、日本の産業技術の発展を示す資料、特に散逸・消失の危険のある資料について、関連する工業会・学会等と協力して分野ごとに所在調査及び系統化調査を行うとともに、調査結果をデータベースに蓄積・公開する。その中で特に重要な資料を「重要科学技術史資料台帳」に登録する。

理工学研究分野