地学研究分野 研究基盤計画
「日本列島の岩石・鉱物の精密解析」および「古生物の系統分類、古生物地理および地球環境変動と生態系の進化の研究
目標
「日本列島の岩石・鉱物の精密解析」では、日本列島とそれに関連深い周辺地域の岩石・鉱物を収集し、それらの科学的な意義を明らかにするための結晶学的・化学的解析と生成年代測定を行い、日本列島形成の議論に資するデータを蓄積する。
「古生物の系統分類、古生物地理および地球環境変動と生態系の進化の研究」では、日本を中心とした東アジア地域の中~新生代陸生動植物化石群を収集し、系統進化と古生物地理および海生脊椎動物化石の系統進化と水性適応の研究を行う。無脊椎動物や原生生物の化石・現世種を対象に収集し、層序分布、形態学的観察、分子生物学的解析、地球化学的解析などにより、地球環境の変動とそれらと相互作用する生態系の進化の解明を目指す。
背景
- 科博のミッションの三本柱である①調査・研究、②コレクション構築、③展示・学習支援のうち、調査・研究は主に総合研究・重点研究によって進められているが、基盤研究はコレクション構築に重点を置き、それに基づく調査研究を行い、それらの成果を学術分野のみならず一般社会でも活用されるようにしたい。
- 地学分野が対象とするコレクションは多岐にわたり、研究者自らが採集などの努力をして収集できるものばかりではない。特に、希少鉱物、大型化石などは野外調査に行って採集できることはまずあり得ない。大学や個人のコレクターが所持する標本に、そういった貴重なものもあり、共同研究を通じてそれらの標本を将来科博のコレクションに移管・寄贈をしてもらえる体制を作らなければならない。また、土木工事などによって鉱物や化石が発見されることも珍しくなく、そのためには基盤研究は臨機応変に対応できる研究という側面も保持していなければならない。
- 前期中期計画の総合研究「変動する地球環境下における生物多様性の成立と変遷」では大量絶滅後の生物の回復、サンゴ化石によって鮮新世にすでにエルニーニョ・ラニーニャ現象が存在した、など多くの地球環境の変動に関する成果が得られた。重点研究「日本列島のレアメタルを含む鉱物の調査研究と年代学への応用」により日本列島でのレアメタルを含む鉱物についての知見が得られた。これらの成果をより効果的に基盤研究に導入することが望まれる。
- 地学関係のコレクションには充足率の評価はほとんどなじまない。特に、過去の全生物を扱う化石の分野では、堆積岩中にどのようなものが埋蔵されているか全く予想できない。新たな発見は常におこっているため、少しでもそれらを多く収集する努力が大切である。
研究計画
共通の方針
- 「日本列島の岩石・鉱物の精密解析」では、日本列島とその周辺地域を一定の岩体・地質帯などの区分で資料収集と調査を行う。
- 「古生物の系統分類、古生物地理および地球環境変動と生態系の進化の研究」では、中~新第生代陸生動植物化石群、海生脊椎動物化石、無脊椎動物化石、原生生物化石といった分類群ごとに資料収集と調査を行う。
個々の分類群の計画概要(中期計画5年の計画)
| 岩石・鉱物
| 日本列島及びその周辺地域を対象に、岩体・地質帯に重点を置いた調査、研究を行う。 |
| 植物化石
| 中~新生代陸生動植物化石群を収集し、系統進化と古生物地理の研究を行う。 |
| 海生脊椎動物化石
| 海生脊椎動物化石の系統進化と水性適応の研究を行う。 |
| 無脊椎動物化石・
原生生物化石 | 化石・現世種を対象に収集し、層序分布、形態学的観察、分子生物学的解析、地球化学的解析などにより、地球環境の変動とそれらと相互作用する生態系の進化の解明を目指す。 |
地学研究部コレクション収集方針
- 日本を中心に、その周辺地域、および世界中の鉱物・岩石・化石を収集する。
- 積極的に外部からコレクションを受け入れる。
- 鉱物においては、未収蔵産地、新種の標本の収集を積極的に行う。日本産鉱物の新種は現在110種類ほどあり、タイプ標本の約70%が科博に収蔵されている。