動物研究分野 研究基盤計画

動物インベントリーに基づく生物多様性の解析

目標

あらゆる動物群を対象に標本・資料を収集し、それらを基に分類と生物地理、生態に関する研究を行って動物インベントリーを構築するとともに種多様性の理解を進める。さらにそれらの標本から得られる形態と分子に関する情報を基に、動物の系統と遺伝的多様性に関する研究を行う。

背景

  1. 科博のミッションの三本柱である①調査・研究、②コレクション構築、③展示・学習支援のうち、調査・研究は主として総合研究・重点研究によって進められているが、基盤研究はコレクション構築を旨とし、それに基づく自然史科学的研究により得られる成果を学界ならびに一般社会で活用されるようにする必要がある。
  2. 動物は分類群により種多様性の解明度に極端な偏りがある。昆虫類や海産無脊椎動物などでは何よりまず種レベルの分類学的研究が求められている。一方、種分類学の進んでいる哺乳類や鳥類では進化や種分化などを研究の主眼とし、さらに種あるいは個体群の保全に貢献するような研究が必要である。
  3. 前期中期計画の総合研究「アジア・オセアニア地域の自然史に関するインベントリー構築」では、日本列島を含むアジア地域と深海を含めた日本周辺海域の調査により、動物インベントリーの研究に多くの成果が得られた。また、重点研究「ストランディング個体を活用する海棲哺乳類の研究」では、クジラ類の生態解明や地域個体群の保全につながる基礎資料が得られた。これらの成果をより効果的に今中期の基盤研究に導入しなければならない。
  4. 動物関係のコレクションの現状は、分類群により各タクサの充足率および種ごとの個体数に大きい差がある。専門家のいる(いた)分類群ではコレクション構築が進んでいるが、それ以外の分類群のコレクションは概して貧弱である(添付資料参照)。また、大型哺乳類や一部の鳥類などのように、保護政策により新しい標本がほとんど入手不可能になっているものもある。

研究計画

共通の方針

  1. 哺乳類、鳥類、魚類、棘皮動物、軟体動物、甲殻類、昆虫類、蛛形類、寄生虫などに関する調査を行うとともに、収集した標本に基づく分類学的研究を推進して動物インベントリーの充実を図り、生物地理や生態などに関する研究結果とも合わせて種多様性の理解を深める。
  2. 形態比較、分子分析などの手法により、動物の系統や進化に関する研究を行うとともに、分子分析により得られたデータから遺伝的多様性の解明を目指す。

個々の分類群の計画概要(中期計画5年の計画)

脊椎動物哺乳類・鳥類脊椎動物の多様性理解を目的として,形態と遺伝的多様性に重点を置いた調査・研究を遂行し,研究資源の保存に努める。
魚類日本を含むアジア地域で調査を行い、魚類インベントリーを充実させるとともに、魚類の分類学的研究を推進する。また、日本産魚類の新種記載を館外研究者と共同して進める。
海生無脊椎動物日本周辺および隣接海域の調査で海生無脊椎動物の標本を収集してコレクションを充実させ、標本に基づいた分類学、分子系統学、動物地理学、生態学等の研究を行って海洋生物多様性の解明を目指す。
陸生無脊椎動物日本およびアジア太平洋地域の周辺諸国を中心に、昆虫およびクモ類の調査を行い、収集した標本に基づく分類学的、生物地理学的研究を推進してインベントリーの精度を高める。また、形態比較や分子情報の分析、生態的知見をあわせて、系統や進化、多様性の研究を進める。

動物研究部コレクション収集方針

  1. 日本とその周辺地域を中心にしつつ世界中の動物を対象に収集する。
  2. 積極的に外部からコレクションを受け入れる。
  3. コレクションの貧弱な分類群ならびに未収蔵産地の標本の収集を積極的に行う。

動物コレクションの詳細はこちらからご覧いただけます(リンクを新しいタブで開きます)(3.2 MB)