ホトトギスの托卵に対するウグイスの対抗手段‐リスクの変化に対応して防衛行動を調節している!

ホトトギスの托卵に対するウグイスの対抗手段‐リスクの変化に対応して防衛行動を調節している!

ホトトギスとウグイス。実物を見たことが無くても、少なくとも名前を知らない人はいない鳥でしょう。特にウグイスは、その『ホーホケキョ』という美しい鳴き声は知られていますね。

国立科学博物館動物研究部の濱尾章二研究主幹は、伊豆諸島の三宅島で実験をおこなうことによって、ホトトギスが托卵(たくらん)を行うことにたいしての、ウグイスがどのように対抗するかについて調査しました。その結果、ウグイスはリスクの変化に対応して、防衛行動を調整していることが明らかとなりました。

この内容は、論文「Seasonal increase in intensity of nest defence against little cuckoos by Japanese bush warblers」(托卵鳥ホトトギスに対するウグイスの巣防衛行動に見られる季節的調節)として、2011年8月12日付けのAnimal Behaviour(英国・米国の動物行動学会合同学術雑誌・電子版)に発表(掲載)されました。

ウグイス

今回のホットニュースでは、今回の実験で明らかになったウグイスの行動について紹介しながら、鳥の行動生態学の研究の様子を紹介したいと思います。
※注「これらの鳥類においては、学術研究として特に許可を得て捕獲しています。また、これらの捕獲個体に異状は生じておりません。」

ホトトギスはカッコウなの?ウグイスはスズメの仲間?~ウグイスとホトトギスの基本情報

ウグイスとホトトギス

ウグイスは、中国東北部・朝鮮半島そして日本に分布します。平均値としては、雄は19.6g、雌は11.5gの小鳥です。多雪地や北方のウグイスは、冬季、低地や暖地に移動します。
一方、ホトトギスはヒマラヤから中国・朝鮮半島・日本で繁殖しますが、日本国内では北海道には分布しません。冬季はインド、東部アフリカに渡去します。ウグイスは1年中日本にいる、ホトトギスは夏鳥(ホトトギスの渡来は初夏の風物)という違いが、本研究のユニークな発見につながっています。
食物はいずれも昆虫です。鳴き声は良く親しまれています。ウグイス「ホーホケキョ」(ほぅ法華経)、ホトトギス「キョッキョ、キョキョキョキョ」(特許許可局)のように聞こえます。

ウグイス

鳥綱 スズメ目  ウグイス科 ウグイス属 ウグイス
学名 Cettia diphone

ホトトギス

鳥綱 カッコウ目 カッコウ科 カッコウ属 ホトトギス
学名 Cuculus poliocephalus

ウグイスVSホトトギス~ウグイスに対するホトトギスの托卵(たくらん)と反応

ウグイスとホトトギスの卵

カッコウ類は他の鳥の巣に自分の卵を産み込んで育てさせる”托卵(たくらん)”の習性をもちます。ホトトギスは、もっぱらウグイスを托卵の相手(宿主)として利用します。托卵を受けてしまったウグイスは、ホトトギスの卵・雛の世話をする羽目になるうえ、ホトトギスの雛がウグイスの卵を巣外に捨て去ってしまうために、自分の子をまったく残すことができません。

カッコウの宿主の中には、卵の模様や色からカッコウの卵と自分の卵を区別して巣外に捨てたり、托卵に気づくと巣を放棄して再び営巣したりして、托卵を拒否するものがいます。しかし、ウグイスとホトトギスの卵はいずれもチョコレート色で模様がなく、区別が難しいのか、ウグイスがホトトギスの卵を区別して托卵を拒否する行動は見られません。

ウグイスはその分布域で広くホトトギスの托卵を受けていますが、ホトトギスがいない北海道では同じくカッコウ科のツツドリによる托卵を受けます。ホトトギスはほぼウグイスのみに托卵します。伊豆諸島では、イイジマムシクイ、ウチヤマセンニュウにも托卵していますが、主な宿主はやはりウグイスです。ウグイスの巣は、ホトトギスの渡来期以降46~54%が托卵を受けます。繁殖期を通じての被托卵率は21~24%です。

東京大学の樋口広芳博士はかつて、ウグイスの巣に人工の卵を入れて反応を調べました。ウグイスは白やピンクの卵を入れると巣を放棄しましたが、なんと赤い卵は抱き続けたのです。ウグイスは托卵を拒否しようとしていますが、ホトトギスの卵擬態が勝っており、卵を区別できずにいる状態のようです。

参考:Higuchi、 H. 1989. Responses of the bush warbler Cettia diphone to artificial eggs of Cuculus cuckoos in Japan. Ibis 131: 94–98.

今回行われた『剥製提示実験』とは?そしてその結果の解説

今回の実験の詳細について見てみましょう。

【実験を行った場所】

伊豆諸島三宅島(島内全域)
畑の周辺の竹藪です。特に、密に茂った成長中の若い竹藪にウグイスは多く営巣します。

【実験の方法】
  1. まず、竹藪の中を歩いて観察し、ウグイスの巣を探します。
  2. ウグイスの巣の前1mのところにホトトギスの剥製を設置し、3~5m 離してビデオカメラをセットします。
  3. 観察対象の巣から8m以上離れて、ひとまず(観察者の)身を隠します。
  4. ウグイスが剥製を見つけるとやかましく鳴くので、鳴き始めから1 分間で実験を中止します。
    剥製・カメラを片付けに行きます。
  5. ハトの剥製には殆ど反応せず鳴かないので、剥製とビデオをセットしたらその場を離れます。 1 時間後に戻って片付けます。後ほど録画を再生し、ウグイスが帰巣してから(剥製を見つけてから)1分間の行動を記録します。

巣防衛は目立つ行動なので、捕食者やホトトギス(本物)を誘引する可能性があります。捕食や托卵を誘発しないため、ホトトギスに対する実験は1分間で終了しました。ハトに対しては目立つ行動を取ることはないので、これらの心配ありません。何れの場合も、実験によって捕食や托卵を誘発したことはありませんでした。

今回の実験の結果について

ホトトギスの剥製を巣の前に置くと、ウグイスはそれを激しく攻撃しました。しかし、無害なキジバトの剥製にはほとんど反応しませんでした。このことから、ウグイスは托卵にやってきたホトトギスから巣を守り、托卵を妨げるものと考えられま

さらに、ウグイスは托卵をされるリスクに応じて、巣の防衛行動を調節していました。ウグイスは暖かい地方(例えば関東地方低地)では4 月に繁殖を始めますが、夏鳥として渡来するホトトギスが托卵を始めるのは6 月になってからです。ウグイスはホトトギス渡来前よりも渡来後に、剥製を激しく攻撃しました。
(グラフ1参照)

今回の実験によって、『ウグイスは托卵されてからではなく、托卵される前に対抗手段をもつこと』が明らかとなりました。托卵に抵抗できないように見えるウグイスの親も、人の目に触れない形で托卵回避を行っていました。しかも、ホトトギスを元々認識できるが、托卵されるリスクが高い時期になると厳戒態勢をとるように防衛行動を調節することがわかりました。

おわりに

托卵もそして、それに対する防御も、子孫を残すための行動として、ウグイス、ホトトギスどちらも必死の重要な行動と言えるでしょう。
研究によって、行動学についての新しい発見を聞いた上で、改めてウグイスやホトトギスについて見かけると、また違った印象を受けるかもしれません。

剥製提示実験の様子
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