「広域施設間における展示協力~寄生虫をテーマとした特別企画展(下関市立しものせき水族館「海響館」)」

標本資料をより有効に活用するために

日本住血吸虫

7月の初め、私は下関市立しものせき水族館「海響館」へ展示協力に行ってきました。私の研究対象は寄生虫(吸虫類やサナダムシ(扁形動物)、線虫類(線形動物)など動物の体にすむ動物)で、その寄生虫をテーマとした特別企画展「寄生して生きていく虫の話〜あなたのそばにいるかもね〜」が、公益財団法人目黒寄生虫館と国立科学博物館との共催で企画され、私は標本の貸し出しと一部展示のお手伝いのご依頼をいただきました。

当館が所蔵する約460万点の標本資料は、研究はもちろん、展示や学習支援のために日本各地の博物館などに貸し出され利用されています。今回のように企画展等のために貸し出される標本・資料は決して少なくなく、平成29年度の調べでは63件、963点を数えました。逆に、当館で行われる企画展などでは他館のご協力を仰いで、当館に所蔵されていない標本資料をご覧いただいています。このように私たちは協力し合って、できるだけ多くのものを多くの方々に見ていただく努力をしながら、標本資料の有効利用を図っています。

こちらもみてみよう!

寄生虫を展示するねらい

寄生虫展_入口

多くの方々が描く寄生虫のイメージは、「怖い」「気持ち悪い」ではないでしょうか。怖さや気持ち悪さを見ていただくのもよいでしょうが、一歩進めて、多様な分類群にわたってみられる寄生現象、生き方の多様性、複雑で奇妙な寄生虫の一生を見ていただくことによって、なぜこのような生物が生まれたのかという生物の進化について考えていただくことができます。さらに、寄生虫による病気を防ぐための正しい情報を提供すれば、「怖がる」のではなく安心して暮らすこともできるでしょう。加えて、小さなお子さんたちを多様な生物の世界へ誘うことも必要です。この特別企画展では、水族館で日ごろ出会う飼育動物の寄生虫や、それに立ち向かう獣医の方の活躍なども紹介されており、「寄生虫を展示するねらい」をしっかりと捉えた優れた展示であると思いました。

連携や協働が重要なわけ

海響館_スタッフ

海響館の前身である下関市立水族館に、私はかつて大変お世話になりました。当館が35年間(1967〜2001年)という長期にわたり実施した「日本列島の総合的自然史科学的総合研究」で瀬戸内海を調査した時(1998〜1999年度)、私は同水族館のご協力のもとに日本固有の小型鯨類、スナメリの寄生虫調査を行い、2000年には水族館の方々と共著で論文を出版しました(Kuramochi et al., 2001 [Mem. Natn. Sci. Mus., Tokyo, (33): 83–95])。「海響館は寄生虫が好き」なのかどうかは解りませんが、そのような縁もあって、今回ご依頼をいただきました。

今回の特別企画展は、山口県の海響館と東京都の目黒寄生虫館、そして当館という、地理的に離れた施設間で標本、映像、画像、情報を出し合い共有して、「寄生虫のおもしろさ」を発信するものですが、地域や背景が異なる施設が連携する中で、同時にそれぞれの個性が生かされています。海響館はフグの展示が売りで、この展示でもフグの仲間やマンボウの寄生虫を出展しています。また、豊田ホタルの里ミュージアム(下関市)からはハリガネムシ(類線形動物)の標本を借用して、最新のハリガネムシ研究の成果を紹介しました。さらに目黒寄生虫館は創始者である故・亀谷 了博士による研究で知られるフタゴムシ(吸虫類)、当館は鯨類の寄生虫と2013年に行った企画展の資料をもとに日本住血吸虫を出展しました。

こうした連携や協働を通して相互に交流することで、広域の博物館等のそれぞれの現状について情報共有がなされ、やがては地域の博物館等の魅力を向上させ、機能強化につながるものと考えています。このような活動を、当館は今後さらに活発かつ広範に展開していきます。

下関市立しものせき水族館「海響館」(リンクを新しいタブで開きます)
山口県下関市あるかぽーと6番1号
特別企画展示は2018年10月28日まで

<執筆監修>
国立科学博物館 動物研究部長 倉持利明

最新の記事