小笠原諸島産沿岸魚類に寄生する二生吸虫類の研究

倉持 利明(くらもち としあき)
動物研究部
名誉研究員
小笠原諸島は東京から約1,000km南 の海域に位置し、緯度では奄美群島や沖縄諸島とほぼ同じです。小笠原諸島の沿 岸魚類の寄生虫に関する研究がこれまでほとんど行われていなかったため、私は国立科学博物館の総合研究「日本の生物多様性ホットスポットの構造に関する研究」(平成25~29年度)に参加して調査に乗り出しました。ここ数年の間にようやく26種の二生吸虫類を検出し、それぞれの分布を調べたところ、約半数が奄美や沖縄との共通種で、同じく約半数が本州・四国・九州沿岸との共通種でしたが、ほかに、日本近海からは記録がなく、ハワイ・オーストラリア産の種が6 種、属までしか解らなかったものが4種含まれていました。
小笠原諸島における魚類寄生虫の研究は始まったばかりです。この先も生物多様性の研究が必要な海域です。
ヒトミハタから得られたBivesicula tarponis
アカハタから得られた Helicometra epinepheli
ナンヨウカイワリから得られたBucephalus varicus
ミナミイスズミから得られたCadenatella isuzumi二生吸虫は寄生虫のひとつです
二生吸虫類は扁形動物門吸虫綱に属する動物で、脊椎動物の主に消化管で生活する寄生虫です。体は扁平で、通常二つの吸盤があります。口と消化管をもちますが、多くは肛門がなく消化管は行き止まりです。ほとんどの種類が雌雄同体で、ひとつの体にオスとメスの生殖器官をもっています。魚類だけでなく、ヒトに寄生する種類も多く知られています。

研究者に聞いてみました!

1)専門は何ですか
寄生蠕虫、特に魚類に寄生する二生吸虫類 (扁形動物門、吸虫綱)の分類と生物地理 を研究しています。
2)自身の研究内容と社会、一般との接点は
寄生虫は宿主動物との強い関わり合いの中で生きています。このような生物同士の関 わり合いは、これまでに私たちが認識してきた以上に地球上のいたるところで営まれているはずです。これをもっと広く一般に広めて行くことで生態系や地球環境の保全の 大切さが浸透して行くものと考えています。
3)研究する上での苦労や悩みなどはありますか
ゴールのないマラソンコースを走っているような気分でこれまでやってきましたが、研究にはゴールがないのに自分の体のゴールがやがてやってくることを意識するようになりました。このまま走り続けたいのですが...。
4)研究する上で一番大事だと思うことは何ですか
伸び代がたくさんある研究テーマに取り組 むことと、自分に伸び代がたくさんあると思えることではないでしょうか。