2010-10-29

壊さずに中を見る?CTスキャンでの研究資料観察とは?


国立科学博物館の展示室で、恐竜の骨の中を見てみよう。












 






















この度、国立科学博物館の地球館地下1階の恐竜展示室の奥に設置されたCTスキャンの装置について紹介しましょう。
このCTスキャンは、一辺が50センチまでの大きさの標本を撮影することが出来ます。病院などのCTスキャンよりも小さいですが、マイクロCTなのでより詳細に構造を解析することが出来ます。これを使えば、恐竜の骨格の化石の外からでは見えない脳の形を推定したり、骨の密度を調べたり、クリーニングを開始する前に岩石の中のどこに化石が入っているかを調べたりすることが出来ます。

 展示室にこのような研究施設が設けられたのは、科博の研究機関としての一面を知っていただきたいという理由もありますが、特別展のために借用して来た標本をスキャン出来るようにすることも意図されています。現在はまだ試運転中ですが、標本のスキャン予定が決まりましたら、ホームページなどで事前にお知らせしたいと思っています。

Q1: どうしてCTスキャンが展示室に?
みなさんが病院で検査を受けるCTスキャンよりは小型ですが、小さな部分をより詳しく見ることができるマイクロCTスキャナいう機械です。来館者のみなさんに研究活動をかいまみていただくために、展示室の一角にCTスキャンを設置する事にしました。

Q2:CTスキャンでどんなことが出来るの?
 化石と現生種の骨格などについて、CTスキャナを使用することによって、脳の形や大きさ、三半規管の形、骨密度、骨と骨の関節の度合いなど、通常ならば標本を破壊(分解)しないとわからないデータを得ることができます。また、標本の形を三次元でデジタル化することもできます。

Q3:どんな標本をスキャンするの?
 展示室や収蔵庫の標本を順番にスキャンして行きます。
平成23年度に国立科学博物館で開催予定の「恐竜博2011」では、海外から実物標本を借用し、CTスキャンしたいと思っています。

このようにして、CTスキャンで大事な標本をさらに見てみることによって、もっと詳細が観察でき、さらなる新しい発見が期待されます。是非地球館地下1FのCTスキャン室を見に来てはいかがでしょうか。新たな発見の現場をまのあたりにできるかもしれません!





参考資料
・論文;林 昭次・竹村貴人・遠藤邦彦・真鍋 真「骨化石観察におけるX線CTの有用性−恐竜Stegosaurus の皮膚装甲の内部構造を例として−」地質ニュース610号,45− 49頁,2005年6月
・朝日新聞2010年7月6日号22面
・論文;廣野哲朗・横山 正・高橋 学・中嶋 悟・山本由弦・林 為人(2002),「マイクロフォーカスX線CT装置を用いた堆積物・岩石の内部構造の非破壊観察」,地質学雑誌, 108, 606-609.
・論文;池原 研(1997)「X線CT装置を用いた地質試料の非破壊観察と測定(1) X線CT装置の原理・概要と断面観察」地質ニュース516号8月号50−61

協力・監修 地学研究部  真鍋 真   
對比地考亘、坂田智佐子
北九州市立自然史・歴史博物館 大橋智之


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研究者紹介 真鍋先生