2010-10-29
壊さずに中を見る?CTスキャンでの研究資料観察とは?
マイクロフォーカスX線CT装置とは?
X線CT装置のCTとは、Computed Tomography(コンピューテッドトモグラフィー)の頭文字“C”と“T”をとっています。測定の原理は、360度の全方位から組織にX線を照射して得られたX線透過率をもとにコンピュータで計算し、断層面上の特定位置でのX線吸収率を算出し、これらのデータを集合させて一つの断層画面で表示したものです。
このX線CTは1968年G.N.Hounsfield博士らによって発明されました。これにより、1979年ノーベル生理学/医学賞を受賞されています。広い分野での活用が期待されるすばらしい発明でした。現在では、当時の装置からは格段と進歩しており、医療を始め、様々な研究分野で活用されています。
普通のX線(レントゲン)写真も、対象物を通過したあとのX線量の減り具合が濃淡で表されていますが、レントゲン写真の場合は一方向にX線を照射して、X線の通り道にある組織や構造すべてのX線吸収量が集約されます。レントゲン写真は言うならば、対象物のX線による像を投影した、一枚の板に押し付けたようなものなのです。
これに対してCTでは、X線の通る方向に沿った「切り口」の様子を再現することができます。全方位から対象の組織にX線を照射して、得られた透過率がコンピュータで計算され、内部構造を反映した微妙なX線透過の差を細かく濃淡として表わすことができ、中がどうなっているのかを知ることができます。さらにCTでは、間隔を密にして連続的に断面画像を撮影することにより、物体全体を三次元的にデータ化することができます。とくに最近では、X線の検出器を複数備え、複数の画像が一度に撮影できるマルチスライスCTが活躍しているようです。観察時間が大幅に短縮され、同じ検査時間でたくさんの情報を得ることができるので、今まで見えなかった情報が見えるようになりました。こうした連続撮影データを利用すれば、物体をいろいろな向きで切った断面も得ることができますし、物体の外形や内部構造などの三次元形状を画像として再現することもできます。
医療用のX線CT装置はその空間分解能が0.1mm程で、生きた人間の体を撮影するのに適した設定で作られているため、もっと小さなものや、もっと大きなものを撮影するのには不向きでした。医療用は人体への影響を加味された設定ですが、その後、半導体チップ等の工業部品の非破壊観察のためにマイクロフォーカスX線CT(マイクロCT)装置が開発され、それぞれの被写体の大きさや性質に合わせた、高解像度の非破壊観察が可能となったようです。産業用は、医療用に比べより広い電圧幅で用い、強い線量が長時間あてられることや、線源がマイクロフォーカスX線であることなど、さまざまな違いがあります。