火山国日本-新たな予報・警報はじまる- (協力:地学研究部 佐野貴司)

火山現象予報・警報はじまる

平成19年12月,気象業務に関わる法律が改正され,気象庁が発する防災情報に新たにふたつの予報・警報が追加されました。ひとつが緊急地震速報としても知られる地震動予報および警報(※1),そしてもう一つが火山現象予報,および警報です。これにより地震や火山噴火の情報は台風や津波等と同レベルの扱いとなりました。

日本には全国合わせて108もの活火山(※2)があります。2004年の噴火が記憶に新しい群馬県・長野県の浅間山,2000年に噴火し全島避難を余儀なくされた東京都の三宅島,同じく2000年に噴火し,それを含めて過去100年に4度の噴火が記録された北海道の有珠山などをはじめ,長崎県の雲仙普賢岳,東京都の三原山,カルデラで知られる熊本県の阿蘇山,今も噴煙を噴き上げている鹿児島県の桜島などがそうです。また,江戸時代・宝永年間の最後の噴火から300年を迎えた富士山も活火山です。

火山現象予報・警報は,これら108の活火山全てを対象として発表されます。発表される予報・警報は火山付近の居住地域に危険を知らせる「噴火警報」,火口や火口から居住地域付近までの区域に対する「火口周辺警報」,火口内などの状況を知らせる「噴火予報」の3種とされ,これまで出されていた「緊急火山情報」「臨時火山情報」は廃止となりました。

プレート境界と気象庁が定義する108の活火山プレート境界と気象庁が定義する108の活火山
※名称が表示されている火山は気象庁が警戒レベルを導入した16の火山(詳細は次頁)

※1 震源からある程度離れた地点に対して,地震波の到達予測時間と予想される震度を伝えるものです。
地震の揺れには大きく分けて,振幅はそれほど大きくないものの伝達速度の速い縦波(P波)がもたらす初期微動と,伝達速度は遅いものの揺れは大きい横波(S波)がもたらす主要動があります。震源ではふたつが同時に発生,震源から近い場所ではふたつの到達時間にもほとんど差はありません。しかし,ある程度離れた場所であればふたつの揺れの到達時間には数秒から数十秒の違いが出てきます。
地震動警報はこの地震の性質を利用して,震源に近い地点での初期微動の情報に基づき,各地点への主要動の到達時刻を予測,発表するものです。

※2 気象庁及び火山予知連絡会では,「概ね過去1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山」を活火山と定義しています。
かつて火山の分類は,常に若しくは頻繁に噴火活動の見られる火山を活火山,噴火活動の記録はあるものの今では噴火が見られない火山を休火山,噴火活動の記録のない火山を死火山と3つに分類してきました。しかし死火山とされてきた筈の火山が近年になって突然噴火するなどしたため基準が揺らぎ,2003年に現在の定義に改められています。

噴火警戒レベルの導入

火山現象予報・警報に加えて,防災対策が整っている16の火山については,新たに噴火警戒レベルが導入され,より具体的な火山活動状況や,火山近隣に居住する人々,登山者などが状況に対して取るべき対応などが示されるようになりました。

噴火警戒レベルは全部で5段階あり,噴火予報にあたるレベル1では火山活動は静穏,または火口内で火山灰の噴出が見られる程度です。

レベル2,レベル3は火口周辺情報にあたります。レベル2「火口周辺規制」は,火口付近に限定された噴火が発生,若しくは発生が予想されている状態です。火山活動の状況に応じて登山者等に対して火口周辺への立ち入りが禁止されます。
レベル3「入山危険」は,居住地に影響を及ぼす可能性のある噴火が発生,或いは予想される状態です。登山・入山が禁止されるほか,火山近隣の居住者に対して注意が促され,状況によってはひとり暮らしのお年寄りなど,災害時に援護が必要となる可能性のある方の避難の準備が始められます。

2008年2月3日,気象庁は桜島について,噴火警戒レベルをそれまでの2から3に引き上げると発表しました。2月6日現在でも爆発的に噴煙が上がり,噴石や,小規模な火砕流が繰り返し発生しているため,レベル3が継続されています。

レベル4,レベル5が噴火警報に該当します。レベル4「避難準備」は居住地域(※3)に重大な被害を及ぼす噴火が発生する可能性が高まっている状態であり,警戒が必要と思われる居住地域での避難の準備,援護が必要な方については避難が行われることもあります。
レベル5「避難」は居住地域に重大な被害を及ぼす噴火が発生してしまっている状態,または噴火が極めて差し迫っている状態です。危険な居住地域から避難することが必要になります。
現在,16火山以外の火山に対しても,警戒レベルの導入が目指されています。

※3 ここで言う危険な居住地域とは一般に,災害対策基本法に基づく地域防災計画などにより予め定められた地域を言います。しかし,実際に被害が及ぶ地域は火山活動の状況によって変わってくるため,他地域の方も情報に十分注意する必要があります。

火山噴火のメカニズム

日本では,東日本で北米プレートの下に太平洋プレートが,西日本ではユーラシアプレートの下にフィリピン海プレートが,伊豆半島から小笠原諸島では、フィリピン海プレートの下に太平洋プレートがそれぞれ沈み込んでいます。4枚ものプレートが互いにぶつかり合う場所は世界にも他に例がなく,日本を世界有数の地震国,また火山国としています。

日本の火山は,プレートの境界に平行に分布しています。
プレートが沈み込んで行くと,周辺のマントルには大きく分けて2つ変化が起こります。
第1には上層からプレートが侵入して来ることによって,マントルの対流が変化し,より深部の高温のマントル物質が上層部に運搬されてきます。
第2には,海に由来する多量の水分が他のプレートの下に沈み込むことで,岩石がより低い温度で融解するようになるのです。融解するのは通常上層のプレートですが,沈み込むプレートが若く高温の場合には沈み込んだプレート自体が融けてしまうこともあります。

こうして融けたプレートや沈み込むプレートの上位に存在するマントルなどがマグマとなります。マグマは高温の液体のため,周辺の岩石よりも比重が軽く,浮力によって次第に上昇してきます。しかし地表から5~20km程度の比較的浅いところまで来ると,周囲の岩石もより深いところに比べると圧力を受けていないため比重が下がり,マグマとほぼ同程度になります。こうなるとマグマは浮力を失うため,その深さに留まり溜まっていくことになります。これがマグマ溜まりです。

火山噴火のメカニズム

マグマ溜まりに溜まったマグマが地上まで上昇して噴火を起こすきっかけはひとつではありません。更なるマグマの上昇によってマグマ溜まりがいっぱいになり溢れた場合,プレートの運動によってマグマが押し出された場合,マグマ中の火山ガスが気化して発泡し,マグマ溜まりの内圧が高まった場合などがあります。

火山が形成される場所は日本のような海溝付近のほかに,中央海嶺とホットスポットがあります。
中央海嶺では地下深部から上昇した熱いマントルが浅部で融解してマグマが生産されています。溶け残ったマントルはプレート下部を,溶けたマグマはプレート上部の海洋地殻をつくっています。中央海嶺は連続的に分布する長い嶺となって野球ボールの縫い目のように地球をぐるりと取り巻いています。多くの中央海嶺は東太平洋や大西洋中央部などの海底に見られますが,地表に見られる部分も存在します。これが東アフリカのグレート・リフト・バレーであり,活発な火山活動と共にアフリカを東西に拡大・分割させつつあります。地球上に噴出するマグマの80%は中央海嶺で生産されています。

ホットスポットはプレートの動きとは関係なく,地表の特定の場所にマントルからマグマが継続的に供給されている場所のことです。その上に乗っている地殻やプレートを突き破る形で火山として噴出しています。最も有名なホットスポットはアメリカ・ハワイ島の下にあり,ハワイ島の火山活動を引き起こしている他,ハワイ島南東の海底に新たな海底火山,ロイヒ海山を形成しています。

マグマの性質や構成成分,マグマに含まれる水蒸気などの火山ガスの量の違いによって,地表に現れる噴火の有様は大きく異なったものとなります。
マグマの流動性が高く,火山ガスが少ない場合の噴火では,爆発や噴煙はないことが多く,地表を大量の溶岩が高速で流れ広がります。ハワイ島のマウナロア,キラウエア火山で見られます。 マグマの流動性がやや低くなると,比較的短い周期でマグマや火山弾が放出される噴火が起こります。日本では阿蘇山の活動が活発なときに見られることがあります。  更に流動性が下がると,溶岩が流れにくくなるため雲仙普賢岳の噴火の際に見られたような溶岩円頂丘(ドーム)が形成されます。
流動性が高く火山ガスが多い場合には,マグマは噴煙と共に幅広く,また高く吹き上がることになります。1986年,伊豆大島・三原山の噴火では,火口と山肌にできた割れ目から間欠泉のようにマグマが吹き上がり,噴煙の高さは最も高いところで1万メートル以上に達しました。
流動性が低く火山ガスが多い場合は,噴火は爆発的となり,火山灰や火山弾が大量に放出されます。溶岩流の速度は遅く,流れというよりゆっくりと押し出されるような様相になります。日本の火山ではこのタイプの噴火が最も多く,桜島や浅間山などが代表的です。

なお,日本では火砕流噴火も良く起こります。火砕流とは火山噴出物であるマグマ,火山ガス,火山灰等の混合物が高速(時には時速100kmを越える)で山体斜面を流れ下る現象です。火口から爆発的に噴出した火山噴出物が周囲の空気をうまく取り込み,空気を膨張させて上昇気流を発生させると噴煙噴火となりますが,うまく取り込めないと,火山噴出物は火砕流となって斜面を流れ下ります。
溶岩ドームを形成するタイプの噴火でも,火砕流が起こることがあります。ドーム内にガスが残ってしまっており,なおかつ新たなマグマの噴出やガス自体の圧力によってドームが崩壊した場合です。1990年に始まった雲仙普賢岳の噴火では,このタイプの火砕流が複数回発生し犠牲を出しました。

また,1回の噴火の途中に噴火の様子が変化して行くこともあります。
はじめのうちマグマや火山灰を吹き上げるタイプの爆発的噴火であったものが,火山ガスが少なくなり,溶岩の流出に変化して行きます。

火山噴火予知と災害への備え

ひとくちに火山,噴火と言っても,その様相,もたらされる災害は大きく異なります。全ての火山の噴火を事前に,正確に予知することは容易なことではありません。
しかし比較的短い周期で噴火を繰り返している幾つかの火山では,複数回の噴火の観測によって,噴火の前に現れやすい特徴をある程度掴むことに成功しています。

例えば北海道,有珠山は,平均して約30年に1回噴火していますが,毎回噴火する3日~10日程度前から局地的な地震が頻繁に発生することが知られていました。
2000年3月下旬,有珠山周辺で火山性地震(※4)が観測され,その回数が日を追って増えて行くようになりました。これを噴火の前兆だとして警戒を呼び掛け,住民に避難の指示を出したところ,果たして最初の火山性地震の観測から僅か6日後,23年ぶりとなる噴火が発生したのです。

現在各地の火山に対し,過去の噴火の研究に加え,火山性地震の観測や同じくマグマの上昇のヒントになる可能性のある地温の観測,またマグマが接近して火山の山体自体を押し上げていないかどうかを確認するため,GPS(精度の良いカーナビ)や傾斜計を使って火山の山体の大きさの変化を測定するなど,継続的な監視が行なわれています。
また,万一の噴火の際に危険が及ぶ可能性のある地域と起こる可能性のある災害をまとめたハザードマップが作成され,各火山周辺の住民に配布,及びインターネットを通じて全国に公開されています。

※4 火山付近の地下を震源として発生する地震で,震源の深さが10km以下(マグマだまりのできやすい深さとおおよそ一致します)と浅いことが特徴です。マグマや火山ガスの移動などが原因とされ,火山の噴火を予知する重要な手がかりのひとつといわれています。

(研究推進課 西村美里)

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