300年ぶりに霧島新燃岳が噴火!~日本の火山の不思議

300年ぶりに霧島新燃岳が噴火!

霧島新燃岳

連日報道されている霧島新燃岳の噴火の状況。周辺の町には沢山の火山灰が積もって、さらには避難を余儀なくされている方もいらっしゃるようです。
今回のホットニュースでは、この新燃岳の300年ぶりの噴火について、現状の説明し、これまでの歴史について紹介し、火山の噴火という現象についてより正確に理解するために、火山にまつわる用語の説明、日本列島の火山の特徴について、じっくり紹介します。

今年1月19日に始まった噴火

新燃岳の下では火山性微動が時々観測されており、2008年夏に小規模な噴火がおこりました.昨年(2010年)の春から夏にかけては小規模な水蒸気爆発やマグマ水蒸気爆発を繰り返したため、大規模な噴火の起こることが危惧されていました。そして1月19日に始まった噴火では断続的に火山灰を放出し、1月27日には火口から上空2000m以上の高さまで噴煙が上がる大規模なマグマ噴火となりました(図1)。火口付近では火砕流も発生しており、風下(南東)にあたる都城市や日南市には多量の火山灰が降り積もっています(図2)。火口付近には多量の噴石が降下しているため、火口から4km以内は入山規制がひかれ、東麓に位置する高原町の一部には避難勧告も出されています。
1月28日、火口内に溶岩ドームが成長していることが確認されました。溶岩ドームは直径600mにも成長し、火口に栓をする形となったため、内部の圧力が高まり、溶岩ドームを吹き飛ばす形で爆発的噴火が起こっているようです。この爆発的噴火による空振により火口から6km以上も離れた場所で窓ガラスが割れるという被害が出ています。

何年ぶりのできごとでしょうか?噴火の歴史(史料に残っているもの)
  • 1716-17年: 大規模な活動があったことがわかっています。このときは水蒸気爆発から、マグマ水蒸気爆発、そしてマグマ噴火へと時間の経過とともに活動様式が変化しました。軽石の噴出、ベースサージ、火砕流、泥流が繰り返し発生したことがわかっています。
  • 1771-72年: 水蒸気ないしマグマ水蒸気爆発に始まり、火砕流を発生させました。降下火砕物によって山火事が発生したと考えられています。
  • 1822年: 水蒸気ないしマグマ水蒸気爆発に始まり、泥流がたびたび発生しました。軽石を降らせると共に西側斜面に火砕流を起こしたと考えられています。
  • 1959年:水蒸気爆発が起こり麓に降灰がありました。
  • 1991年:顕著な火山性地震活動のあと、微噴火しました。
  • 2008年:水蒸気爆発が起こり麓に降灰がありました。
 今回噴出した軽石は1716-17年に噴火したマグマとほぼ同じ化学組成(安山岩質)であったことが明らかになっています。
そもそも新燃岳とは? 地質学的な基礎情報 霧島火山群

「霧島火山地質図」によれば、霧島火山とは九州南部、鹿児島・宮崎両県の県境付近に位置する第四紀の火山群の総称です。最高峰の韓国岳(からくにだけ)をはじめ、高千穂峰など、20あまりの火山があります。この中で有史後に最も頻繁に活動をしてきた火山が御鉢と新燃岳です。

火山噴火の用語解説

富士山_雲仙

火山噴火が起こるとテレビや新聞で様々な火山用語が出てきます。火山噴火の話題が多くなればなるほどアナウンサーや新聞記者達はこれら用語を頻繁に使用することになります。しかし、「私には意味が分からない」という方もいるのではないでしょうか?また、火山用語には似たものがいくつか存在しますが、用語が違うとその意味が異なることもあります。そこでここではテレビや新聞で良く出てくる火山噴火の用語を解説します。

火山性地震

火山の下で発生する小さな地震です。阪神大震災を引き起こしたような大地震は地殻に断層ができることにより発生しますが、火山性地震はマグマなどの移動の際に地殻内に小さな割れ目をつくるため発生すると考えられています。大噴火が起きているときは、火山性地震は断続的に発生しています。

火山性微動

火山の下で起こる特有の振動です。揺れが長く継続することから(数十秒から数分以上続き、数日間に及ぶ場合もある)、火山性地震とは区別されています。 噴火に先行することも多いため、噴火予知の立場からは重要です。

水蒸気爆発

地下水や火口湖などの水がマグマによって熱せられ、沸騰して地表へ噴出する噴火です。マグマは噴出しないため、以下のマグマ水蒸気爆発とは区別されます。

マグマ水蒸気爆発

水蒸気と共にマグマが噴出する噴火です。マグマ本体が地表へ噴出するため、水蒸気爆発よりも大規模に噴火することが多いです。

マグマ噴火

火山が開きマグマが地表へ放出される現象です。空中へ放出されたマグマが周囲の空気を暖めて膨張させるため、火山灰が成層圏(上空10km以上)に達することもあります。

火砕流

数百度Cを超える火山ガスと熱い火山灰の混合物が火山体を駆け下る現象です。マグマ噴火により空中へ放出された火山灰の塊が熱いうちに火山体へ落下して発生したり、熱い溶岩ドームが崩壊することにより発生したりします。

ベースサージ(火砕サージ)

火山ガス、水蒸気、熱い火山灰等の混合物が高速で火山体を駆け下る現象です。火砕流よりも高速(時速100km以上)の乱流であり、これが積もると波状の堆積層となります。マグマが地下水や湖の水に接して爆発的に発生することが多いです。

土石流

斜面や谷に溜まった多量の火山灰などが雨や川の水によって一気に押し流される現象です。

噴石(図3)

火山噴火により吹き飛んでくる岩石のかたまりです。「人間や家屋にぶつかった際に大きな被害がでる岩石」という意味の防災用語であり、元来は科学用語ではありません。同様の科学用語には、火山岩塊「直径>64mmの火山噴出物」、火山礫「直径2~64mmの火山噴出物」、火山弾「紡錘状、パン皮状などの特定の構造をもつ火山噴出物」、軽石「多孔質な火山噴出物」などがあります。

溶岩ドーム(図4)

地表に出た溶岩が流出することなくその場に盛り上がった地形です。古来は「溶岩円頂丘」と呼ばれていましたが、1990年代前半に長崎県の雲仙平成新山が形成された際、中田節也博士(東大教授:当時は九大所属)が「溶岩ドーム」という用語を使用したことにより、この新用語が定着しました。

日本の火山の現状

日本の火山

日本には108もの火山が存在し、毎年複数の場所で噴火が起こっています。しかしマスコミに大きく取り上げられた火山噴火は、2000年の有珠山噴火と三宅島噴火以降、ほぼ皆無でした。そこで以下では現在活動している活火山の一部を紹介します。

桜島

20世紀以降、日本で最も多量にマグマを噴出した火山活動は1914年の桜島の大正噴火です。この噴火により流出した大量(1.5立方km)の溶岩流が海を埋め立て、桜島は大隅半島と陸続きとなりました。桜島はこの後も断続的に噴火を繰り返している最も活動的な火山です。島内には最高峰である北岳山頂火口をはじめとして複数の噴火口が存在し、中でも南岳山頂火口からは現在も活発にマグマが放出されています。1990年代から比較的噴火の回数が減りましたが、2006年から活動が活発化しており、鹿児島県や火山研究機関は警戒を呼び掛けています。

阿蘇

阿蘇は世界中で最も巨大な火山の1つです。巨大なカルデラ(東西約18km・南北約24kmの楕円形の窪地)を持つことから「カルデラ火山」と呼ばれています。このカルデラは約30万年前から9万年前までの4回の大噴火により形成されました。大噴火の際に放出されたマグマは火砕流となって火山の四方八方に広がりました。火山噴出物はカルデラの外の台地を作るだけでなく、谷沿いに九州の東、西、北の海岸に達し、一部は海を越えて天草や山口県の秋吉台にまで分布しています。カルデラの形成後は中央火口丘群での噴火活動が活発に起こっており、2000年以降も中岳で毎年のように噴火を繰り返しています。中岳は活動火口の近くまで一般客が接近できる世界でも数少ない場所の1つであるため、火山活動を間近に見学できる貴重な場所と言えるでしょう(図5)。

浅間山:(図6)

現在、関東地方(伊豆諸島を除く)で最も噴火を多く繰り返している火山は浅間山でしょう。1783年の大噴火の際にはマグマが火砕流や溶岩流として放出されるとともに大量の土石流が発生し、吾妻川や利根川沿いに大きな被害が及んだと記録されています。今世紀に入っても2004年と2009年に爆発的噴火を行い、東京などの関東地域に火山灰を堆積させました。

富士山:(図7)

上記の活火山とは異なり、現在富士山は噴火活動を行っていません。富士山の最近の活動は1707年(宝永4年)に約16日間続いた宝永噴火です。この噴火を最後として富士山は長い眠りに入っていますが、今世紀に入って富士山噴火が注目をあびました。これは2000-2001年に地下のマグマや火山ガスの動きと関連していると思われる「低周波地震」が多発し、富士山が活火山であることが社会に再認識されたからです。現在の霧島新燃岳の噴火では多量の火山灰が宮崎県内に降下していますが、宝永噴火のような活動が起これば、日本で最も人口が集中している関東地域でも同様のことが起こります。従って富士山の火山活動についても注目しておくことは重要です。

科博で火山について考えてみよう

科博_火山

科博における火山の展示は日本館3階で見学することができます。皆さん、この機会に火山の展示をご覧頂き、火山について理解を深めて頂ければ幸いです。

火山弾(図8)

3階の南翼を右へ入ったあとに右方向の壁を見ると、実物の火山弾や火山灰が展示してあることに気がつくはずです。これらは日本中の様々な火山から採取してきた資料であり、自由に触ってその感触を楽しむことができるように展示してあります。ただし一部の資料は尖っているため、怪我をしないように気をつけて触ってください。

火口から投出されたマグマは空気中を飛んでいる間や地面に着地したとき、変形して様々な外形を持つようになります。また特徴的な内部構造がつくられることもあり、これら構造を持つものを火山弾と呼びます。火口近くには1m以上もの巨大な火山弾が飛来することがあります。

一番下にある最も大きな資料は伊豆大島で噴火した紡錘状火山弾です。これは粘性の低いマグマが火口から投出されたときにできたものであり、両端が細くなっています。展示資料の中には富士山から噴出した紡錘状火山弾もあります。

一方、粘性の高いマグマが火口から放出されたときにみられるものが、パン皮状火山弾であり、これも複数展示してあります。外側は空気による急冷で生じた多角形の皮殻で囲まれ、亀の甲羅のように見えることもあります。飛行中も、そして着地後も内部は徐々に発泡を続けたため、表面はひび割れを生じました。

この他にもペレーの毛、火山灰、火山豆石、溶岩鍾乳石など火山噴火がつくった様々な奇岩が展示してありますので、見学を楽しんでください。

火山と温泉の分布(図9)

次に左隣の「火山と温泉の分布模型」を見てみましょう。オレンジ色の点は日本列島にある活火山の位置を示してあり、108あります。「大晦日の除夜の鐘の数と一緒」と覚えれば忘れません。模型にはオレンジ色のラインも引かれていますが、これは日本海溝などのプレート境界です。火山の分布とプレート境界を見比べてみると、火山と海溝は平行に列をなしていることが分かるはずです.これは海溝から沈み込んだプレートが水を地下に押し込み、一定の深さの岩石を溶かしやすくするためだと考えられています(図10)。

火山の存在は温泉の分布とも密接に関わっています。模型内の黄色の点が温泉の位置であり、これらの多くは火山の近くに分布しています。この理由は地下水がマグマの熱で暖められ、吹き出したものが温泉だからです。火山は噴火により災害をもたらすことがありますが、温泉というめぐみをもたらす存在であることも理解頂けたらと願っています。

監修・協力
佐野 貴司 地学研究部 鉱物科学研究グループ 研究主幹

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