国内初のナキウサギ類の新種化石発見!
国内初のナキウサギ類の新種化石発見!
岐阜県瑞浪市松ヶ瀬町地内の土岐川河岸にある野外学習地から「化石」が2008年に発見されました。発見された化石は、哺乳動物の下顎(したあご)でした。今からおよそ1750万年前(新生代第三紀中新世前期)の地層から化石が発見されました。発見者は、岐阜県瑞浪市化石博物館ボランティアスタッフの楓達也さんです。
発見された化石の骨や歯の形からナキウサギの仲間であることが分かり、国立科学博物館地学研究部生命進化史研究グループ長の冨田先生のもとで研究されました。
その結果、これまでに知られていたナキウサギの仲間のなかで、絶滅したアロプトックス属というグループに含まれることが分かりました。しかし、これまで知られているどの種類とも特徴が異なるため新亜属かつ新種と判断され、Alloptox (Mizuhoptox) japonicus(アロプトックス・ミズホプトックス・ジャポニクス)という新亜属新種名がつけられました。
この化石についての報告が、学術論文として2012年4月30日発行の日本古生物学会欧文誌「Paleontological Research (パレオントロジカル・リサーチ)」に掲載されました。表紙に写真も掲載されました(右写真)。
協力:日本古生物学会今回のホットニュースでは、発見された新種の化石について、どのような状況で発見されたのか、どのような化石なのか?新種発見についてじっくりみてみたいと思います。
保存状態は大変良く、黒光りした歯 ── 発見された化石とは?

化石が発見された場所は、岐阜県瑞浪市松ヶ瀬町地内の土岐川河岸にある野外学習地。通常は、様々な方が訪れて化石の発掘や、地層の観察を行う場所なのです。様々な方がじっくりと観察しているはずで、新種を見つけるチャンスがあったはず!?実は、意外と身近な場所からの大発見でした。発見された場所は、瑞浪層群明世累層とよばれる地層で、今からおよそ1750万年前、新生代第三紀中新世前期の地層です。
見つかった化石は、哺乳動物の下顎(したあご)の化石でした。大きさは、長さ5センチほど。とても保存状態は良く、黒光りした歯も完全に残されていました。通常発見されても、歯が顎の骨から抜け落ちていることが多いようですが、今回のように“保存がよい”ということはたくさんの情報を持っているということです。そこからどんなことが分かったのでしょうか?
新種発見! ── どうやって新種だと分かったの?

まず、顎(あご)と臼歯の形から、ナキウサギ科の化石であることがすぐに分かりました。ナキウサギの仲間は、属の同定のためにとくに重要な部分が下顎の「第三小臼歯」です。そのエナメル質が作るパターンからアロプトックス属であることが明らかですが,その詳細な形がこれまでのどの種類ともはっきり異なることから、新種(ジャポニクス)と判明しました。
これまでアロプトックス属には6種が知られていましたが、それらは互いに比較的良く似た特徴を持っていました。今回の新種は、これらすべての種とはっきりした違いがあるため、亜属としても区別できるために、新亜属(ミズホプトックス)と言うグループとして分けることになったのです。これは、日本で初めて新種名がついたナキウサギの仲間となりました!
これまでに知られているアロプトックス属の化石は中国~トルコで見つかっていました。今回の発見はもっとも東にあたる日本からということで、日本が大陸と陸続きであったころの生物相を知る上で意義のある発見となりました。
ちなみに、約5000万年前から生息していたとされるナキウサギ類は、絶滅したものを含め約25の属が知られています。現在生きているのは、ナキウサギ科ナキウサギ属1属のみです。アジア、東ヨーロッパ、北米の一部に30種が生息して、日本では北海道だけに棲んでいます。高い音で鳴いて、体長は約20センチ、耳が小さく、見た目はモルモットに似ています。アロプトックス属は絶滅したグループであり、ナキウサギ属の直接の祖先にはあたりません。
復元する! ──どんな生き物だったのだろう?

今回の発見から、復元画が作成されています(上の画を参照;冨田先生監修、イラストレータ 中上野氏、瑞浪市化石博物館提供)。このような復元想像画があることで、昔生きていたであろう生き物をとても想像しやすくなります。このような復元想像画を描く上で、どのような注意が必要なのかを冨田先生に伺いました。
質問その1! 復元するときに気をつけることはどんなことでしょうか?
冨田先生:すでに絶滅してしまっている動物ですから、現在の動物の中でいちばん近いものや、同じ絶滅した動物でもより完全な化石を元に復元された動物などを参考に全体の姿を考えます。
質問その2! 今回の復元想像図で特徴的な点はどこでしょうか?
冨田先生:下顎の大きさからは、現在のナキウサギより大きくて体長30~35センチ位と推定しています。またその形態は、現在のナキウサギとウサギ類の両方の特徴を少しずつ持っているので,その外形をそれらの中間のようなイメージで描いてもらいました。
質問その3! このような復元画のばあい、専門的に絵を描かれる方がいらっしゃるのでしょうか?
冨田先生:復元画は古生物復元画家の中上野 太さんが描かれました。私が監修を行いました。
しかし、今回のように下顎しか見つかっていない動物の復元はほとんど不可能で、体や耳の形などはずいぶん想像をたくましくして描いてもらいました。この意味で、今回のは復元想像図という方が当たっているでしょう。
今回の発見のトピックスをきっかけに、哺乳類化石に興味を持った方。展示などでじっくり標本を見てみることを是非おすすめします。太古の生きていた時を想像できるでしょうか。
監修・協力 国立科学博物館 地学研究部 冨田幸光 グループ長