夏休みの自由研究で守られた貴重なマリモ - 絶滅危惧の山中湖フジマリモ

夏休みの自由研究で守られた貴重なマリモ - 絶滅危惧の山中湖フジマリモ

絶滅危惧の山中湖フジマリモ自由研究で守られた貴重なマリモ

本年4月に国立科学博物館から山中湖村に、フジマリモが無償譲渡されました。湿重量(濡れた状態)として、約100g。これから様々な研究や活用を行っていくことになります。

富士五湖に生息するフジマリモは、山梨県の天然記念物に指定されていますが、生育環境の悪化のせいで、一時は絶滅したと考えられていました。山中湖では近年に石礫の上に付着した糸状のものが僅かに見つかっていますが、昔見つかっているような球化したものではありませんでした。

実は、山中湖で採取されたフジマリモが、昭和33年に行われた小学5年生の夏休みの自由研究から継続されて今まで50年以上家族で育てられていることが判明しました。このフジマリモが貴重なマリモの仲間であることが、遺伝子解析などにより国立科学博物館で確認され、昨年展示も行われました。

このマリモについての情報が報道されたことよって、貴重な「フジマリモ」が東京都内で育てられていたことを知った山中湖村が国立科学博物館に連絡を取り、今回の譲渡が実現しました。

夏休みのこの時期に、今回のホットニュースでは、自由研究がきっかけで守られたフジマリモについて改めて、フジマリモにとりまくお話や現状について紹介したいと思います。

フジマリモとは?

“マリモ”と聞くと、北海道の阿寒湖のマリモを思い出す方も多いのではないでしょうか? マリモは阿寒湖のものが有名ですが、富山県の立山町や琵琶湖など全国各地にそのなかまが見つかっています。

マリモは,枝分かれする糸状の緑藻(藻類)で、水流などにより絡み合い球化します。琵琶湖に生息するマリモは石の上にコケのように付着しているだけで球化しません。フジマリモは、球状の集合体を作る阿寒湖のマリモの変種として報告されました。山梨県の天然記念物に指定されています。

フジマリモ自由研究で守られた貴重なマリモ
フジマリモ発見の経緯とは?

1956年(昭和31年)4月に山中湖村村立山中小学校の6年生男子児童が山中湖で直径2センチほどの緑色の球状の藻を見つけ、同小学校の当時の校長、杉浦忠睦先生に報告し、杉浦先生が「富士毬藻(ふじまりも)」と命名しました。杉浦先生の報告を受け、同年5月に東京大学理学部本田正次教授によりマリモの一種であることが確認され、その翌年の1957年に、長崎大学の岡田喜一水産学部教授によって、学名Aegagropila sauteri var. yamanakaensis(和名:フジマリモ)として、長崎大学水産学部の紀要に報告されました。

このフジマリモは、当時マリモの仲間の南限の記録として1958年に山梨県の天然記念物に指定されています。河口湖では1979年に、西湖では1993年に発見され、1993年には山中湖とこれらとあわせて「フジマリモ及びその生息地」として県天然記念物に指定されました。

発見当時は山中湖の北東側では普通に見られ、台風時などには多数の球状のマリモが打ち上げられる程だったようです。しかしながら、山中湖のフジマリモは、湖の環境の悪化に伴い、激減し、見つからなくなりました。潜水調査でも1993年の調査以降見つかっておらず、絶滅したのではと思われていました。2007年に山梨県環境科学研究所等による潜水調査がおこなわれ、湖底にごく僅かに糸状のものが石上に生育していることが確認されました。

夏休みの自由研究で守られたフジマリモ!

フジマリモは、発見当時には山中湖の湖岸に多く生息しており、住民の多くはそのマリモの存在について知っていましたが、あまり注目されてはいませんでした。

東京都にお住まいの亀田良成さんは、昭和31年から33年頃(天然記念物の指定前)に山中湖を家族旅行で滞在中に杉浦校長が書かれたフジマリモについての資料を読んで興味を持ち、フジマリモを採集しました。

このフジマリモの生育記録を中心に、小学5年生であった昭和33年の夏休みの自由研究として、「山中湖の研究」という題でまとめて、学校に提出しました。その研究材料のフジマリモは、それから56年間にわたって家族で大切に育てられました。

「貴重なマリモなのでは・・」

亀田さんはフジマリモが現在のような絶滅危惧状態にあることを偶然インタネットで知り、育ててきたマリモが貴重な存在であることに気がつき、どうすれば良いのかについて山登りの友人に相談しました。その友人の紹介により、昨年(2011年6月)に亀田さんから育ててきたフジマリモの保存について、国立科学博物館・植物研究部研究主幹の辻彰洋先生に相談がありました。

国立科学博物館では、この亀田さんのマリモについて顕微鏡による形態観察と、遺伝子解析を行いました。その結果、これがマリモを含むシオグサ科の葉緑体や分枝の特徴を持っており、遺伝的に立山のタテヤママリモに近縁で、よく知られている阿寒湖や釧路湿原の「マリモ」とは遺伝的に異なること、そして、亀田さんが他の湖や川から水生生物を持ち込んだ記録がないことから他の種類のマリモが入っていないことが確認でき、この亀田さんのマリモが「山中湖由来のマリモ」であることが確認されました。

この亀田さんに長い間育てられていた貴重なマリモを国立科学博物館の筑波実験植物園の平成23年度企画展:水草展で、生きたまま展示することになりました。そして、これまでそのマリモが守られてきた経緯を紹介ことも含め、プレスリリースされ、多くのメディアに注目されることになりました。

夏休みの自由研究で守られたフジマリモ

フジマリモ - 山中湖村での栽培および野生復帰に向けた取り組み

国立科学博物館・植物研究部では、亀田さんのフジマリモについて、さらに詳しく研究することとなりました。どの種類と近い種類かといった分類学的な研究について引き続き取り組んでいき、さらに、その保全についての研究を行っています。

亀田さんが50年以上にわたって育ててきたことで守られたこの貴重な「フジマリモ」を将来にわたって安定的に育て続けることが必要と考えられます。「フジマリモ」が山中湖で危険な状態にあり、野生絶滅の可能性があることも踏まえ、ひとまず山中湖外で安定的に栽培すること、そして万一山中湖で野生絶滅が生じた時にはこのフジマリモが元の状態で生息するように復元することへの取り組みについても検討する必要があると考えています。

そのため、亀田さんと共同で、様々な生育条件(温度・水・光条件)でマリモの生長観察を続け、どのような条件が亀田マリモの生育に適しているかについて、これからも検討を行っていきます。

現在までに、このフジマリモは、阿寒湖のマリモに比べて高温に強く成長が早いといった特徴があることが分かってきています。

現在のフジマリモ

山中湖村では、山中湖交流プラザ「きらら」において栽培・展示・研究を行い、貴重なマリモが多くの方にご覧いただけるよう観光資源として役立てること、そして、国立科学博物館・植物研究部が専門的な指導のもと、これらのマリモを増殖し、将来的には、学校教育活動等で利用すること、そしてさらに、マリモの野生復帰も視野に入れて取り組んでいます。

このマリモの話をきっかけに、皆さんにもより一層、生物の絶滅危惧について関心を持っていただければと思います。

山中湖村での栽培および野生復帰に向けた取り組み

監修・協力:植物研究部 菌類・藻類研究グループ 辻彰洋 研究主幹

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