太平洋の海底下に眠る巨大な盾状火山!

ジョイデス・レゾリューション

「世界最大海底火山(読売新聞9月8日)」、「地球最大の火山確認(朝日新聞9月10日)」などの見出しの新聞記事をご覧になった方がいるかもしれません。これらは英国の科学誌「ネイチャージオサイエンス」に発表された論文が紹介されたものです。これは4年間に及ぶ日米英の研究者達による共同研究の成果です。

図1)2009年の調査を行った深海掘削船「ジョイデス・レゾリューション」

研究対象は日本から東方へ約1500kmの太平洋下に存在する巨大海台「シャツキー海台」です。この海台が火山であることは数十年前から分かっており、広大な盾状火山と考えられていました。しかし火口の位置、溶岩流の積み重なりかたや分布など、地形・地層の詳細は不明でした。そこで2009年に掘削調査により浅い部分の溶岩流を採取し、形態観察や化学分析などを行いました(図1)。さらに2010~2011年に調査船から音波を出して深い部分の溶岩流層を詳しく調べました。これら2種類の成果をまとめたのが今回の結果です。

シャツキー海台の掘削研究

シャツキー海台と掘削地点

図2)シャツキー海台と掘削地点(赤丸)。
左上は日本とシャツキーライズの位置関係図。Sager et al. (2010)を簡略化。

シャツキー海台は周囲の海洋底から3,500m程盛り上がっている海の台地であり,日本の国土に相当するほど広大です。海台は3つの高まりと北端の幅の狭い海嶺からつくられています(図2)。3つの高まりは南から北に向かってタム山塊,オリ山塊,シルショフ山塊と名付けられています。噴火は約1億4,700万年前に始まり,最大のタム山塊を形成したこと,マグマ活動は次第に弱まりながら北に移動して北方の2山塊をつくったこと,約1億2,500万年前まで続いたこと等が推定されていました。

2009年の調査では、シャツキー海台の5地点で海底に孔を掘り(図2),4地点で溶岩流の採取に成功しました。各地点で掘削した積み重なり溶岩流の厚さは53~173 mであり、合計で471 mのコア(柱状の溶岩)を回収しました。一方、最後の1地点では約120 mの火山砕屑物(溶岩のかけらや火山灰が泥や砂の中に混ざっている地層)が得られました。全ての地点で火山岩が得られたため、シャツキー海台は巨大な火山体であることが確実となりました。

1つの巨大火山?

掘削により採取されたコア試料

図3)掘削により採取されたコア試料 これらコアの化学分析を行った。

2009年の航海で採取された溶岩は全て玄武岩ですが、玄武岩には様々な化学組成を持つ岩石が存在します。そこで採取した玄武岩の中から約220個を選んで化学分析を行いました(図3)。その結果、南端のタム山塊の玄武岩はどれもほぼ均一な組成でした。これに対し、北方の2山塊の玄武岩は多様な化学組成を持っていました。タム山塊は巨大ですが、1つの火山なのかもしれません。オリ山塊やシルショフ山塊はタム山塊よりも小さいのに複数の火山が繋がって出来ているのかもしれません。

一方、2011~2012年の調査では、船から音波を出し、海底の地層から跳ね返ってきた波をつかって溶岩流の分布や厚さを調べる研究が行われました。調査は主にタム山塊で行われました。その結果、溶岩流と地下でマグマが固まった岩石(はんれい岩)を合わせた厚さは30kmにも達することが分かりました。また、溶岩流の分布を詳細に調べると、多くの溶岩流は山塊の中央部から流れ出たことが分かりました。さらに、中央部にはカルデラ地形(大きな火口)も発見されました。

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タム山塊は隣接する複数の火山が重なって出来た盾状火山と思われていました。世界最大の活火山であるハワイ島も5つの盾状火山の集合体です。しかし、今回新しく得られた玄武岩の化学組成や地形・地層の情報を説明するためには、タム山塊が1つの盾状火山であると都合が良いことに気がつきました。もしこれが単一の火山であったら、地球上では突出して大きく、太陽系で最も大きなオリンポス火山(火星)にも匹敵します。これが今回の論文の主張です。

今回の成果には統合深海掘削計画(IODP)が大きく貢献しています。IODPは日米が主導して世界中の国々の研究者達が深海掘削船へ同乗し、共同研究を行うプロジェクトです。国立科学博物館ではIODPや前進の深海掘削計画(ODP)に関する常設展示を行っています。日本館3階南翼では日本の科学掘削船「ちきゅう」の展示、地球館地下2階では米国の掘削船「ジョイデス・レゾリューション」の展示を行っています。また、2009年の掘削航海の様子は以下のURLで公開されていますので、ご覧ください(図4)。

<執筆・監修>
国立科学博物館 地学研究部 鉱物科学研究グループ 研究主幹 佐野貴司

<参考図書>
Korenaga, J., and Sager, W. W. 2012. Seismic tomography of Shatsky Rise by adaptive importance sampling: Journal of Geophysical Research vol. 117, B08102, 23 p., doi:10.1029/2012JB009248.
Sager, W. W., Sano, T., Geldmacher, J., and Expedition 324 Scientists. 2010. Proceedings of the Integrated Ocean Drilling Program vol. 324, Integrated Ocean Drill. Program Management International, Inc., Washington, DC, doi:10.2204/iodp.proc.324.101.2010.
Sager, W. W., Zhang, J. Korenaga, J., Sano, T., Koppers, A. A. P., Widdowson, M. & Mahoney, J. 2013. An immense shield volcano within the Shatsky Rise oceanic plateau, northwest Pacific Ocean. Nature Geoscience vol. 6 No. 9, 6p, doi:10.1038/ngeo1934,
Sano, T., Shimizu, K., Ishikawa, A., Senda, R., Chang, Q., Kimura, J.-I., Widdowson, M., and Sager, W. W., 2012, Variety and origin of magmas on Shatsky Rise, northwest Pacific Ocean: Geochemistry, Geophysics, Geosystems vol. 13, Q08010, 25p., doi:10.1029/2012GC004235.

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