小笠原に新火山島が誕生?
小笠原に新火山島が誕生?

図1.西之島を含む伊豆−小笠原弧の火山分布図。
平成25年11月20日、気象庁は小笠原諸島・父島の西方沖に位置する火山島、「西之島」の南東500m付近で噴火が確認されたと発表しました。これに伴いNHKをはじめとする報道機関が噴火映像を公開しています。
今回のホットニュースでは、小笠原諸島の火山島について、そして、噴火について紹介します。
今回噴火が起こった西之島を含む小笠原諸島は、伊豆−小笠原弧の南部を形成している火山島の集まりです(図1)。伊豆−小笠原弧は延長1500kmにも及ぶ火山列であり、北端には伊豆大島や三宅島、南側には硫黄島などの噴火活動が盛んな火山島が存在します。
平成23年にユネスコの世界自然遺産に登録された父島や母島なども火山島ですが、これらは1000万年以上前に活動を停止しており、現在噴火はしていません。噴火活動が活発なのは「小笠原トラフ」とよばれる水深の深い溝の西側に並ぶ西之島や硫黄島などの火山列です(図1)。同火山列には青ヶ島や鳥島などの活火山も並んでいます。
西之島は40年前にも噴火した活火山

図2.(a)、(b)1973年から1974年までの噴火に伴う西之島新島の形成過程および(b)~(d)噴火後の海食および堆積に伴う西之島の地形変化
(青木・小坂、1974;小坂、1991の一部を抜粋)。
西之島は気象庁が定義する活火山であるため、噴火する可能性は高いと考えられていました。前回の噴火は1973年春から1974年6月まで1年以上も継続し(青木・小坂、1974;小坂、1991)、噴火終了後も毎年のようにマグマ活動に伴う海の変色が確認されていたからです。1973年の噴火前、西之島は南北に細長い胡瓜のような形をしていました(図2a)。現在は旧島とよばれている場所です。
1973年4月から5月にかけて、この旧島の南東から水煙や白煙が確認され、9月には直径30mを超える火口が出現しました(図2a)。その後、5地点の火口から溶岩流や火山灰が噴出し、1974年7月には旧島に連結し、旧島よりも広い地域が陸化しました(図2b)。これら場所は新島とよばれています。噴火終了後、新島は海食や堆積により地形が変化していきました(図2b,c,d)。1990年頃までには北岸の湾入部が埋め立てられ、島全体はほぼ正方形になりました(図2d)。
今回はどのような噴火?

図3.2013年11月の噴火地点(赤丸)と山頂カルデラ火口の推定(火口縁を橙色の点線で示した)。地質図(海野・中野、2007)に加筆。
今回噴火が確認された「西之島の東南500m地点」とはどのような場所でしょうか?実は、ここは西之島火山の噴火の中心部です。火山体の大部分は海面下にあるものの、西之島火山のサイズは底面の直径が20〜30km程、比高3000m以上と見積もられています。これは富士山に匹敵する巨大な成層火山です。海底地形を観察すると、西之島旧島は直径1kmを超える山頂カルデラの火口縁であり、西之島新島はその火口内に形成された火口丘の一部であることがわかります(図3)。現在噴火を行っている地点は山頂カルデラ内部であり、西之島火山を形成したマグマの多くが噴出した場所です。
11月21日時点で火口丘が海上へ頭を出し、中心部の火口からマグマが噴出しています。火口の地形から判断すると、地下のマグマ溜まりから火口に続くマグマの通り道(火道とよばれます)がしっかりとできていることが推定されます。このため、マグマ溜まり中のマグマが枯渇するまでしばらく噴火が続くと予想されます。
国立科学博物館日本館南翼の常設展示で西之島火山を確認しよう

図4.国立科学博物館・日本館3F南翼の「火山と温泉の分布」展示
国立科学博物館の日本館3F南翼には「火山と温泉の分布」の展示があります(図4)。この展示では気象庁が定義した108の火山の分布を見ることができます。今回噴火が始まった西之島火山がどこにあるのか確認してみましょう。なお、この展示が作製された平成18年以降の平成23年に新たに2地域の火山が活火山として追加選定されたため、現在の活火山数は110となっています。
西之島を含む伊豆−小笠原弧の活火山の分布を見てみましょう。最北端の富士火山から最南端の日光海山まで24個の活火山が緩やかな弓状に並んでいます。この活火山分布は伊豆・小笠原海溝と平行に列をなしていることに気がつくと思います。実はこの火山分布は火山をつくったマグマの成因を解明するヒントになりました。海溝から沈み込んだプレートは水を地下に押し込み、一定の深さの岩石を溶かしやすくするためにマグマが生産されます。沈み込みの角度は一定のため、海溝から一定の間隔をおいた場所にマグマが噴出し、火山を形成するのです。
<執筆・監修>
国立科学博物館 地学研究部 鉱物科学研究グループ 研究主幹 佐野貴司
<参考文献>
- 青木斌・小坂丈予(1974)海底火山の謎−西之島踏査記。東海大学出版会、250p.
- 小坂丈予(1991)日本近海における海底火山の噴火。東海大学出版会、279p.
- 海野進・中野俊(2007)父島列島地域の地質。地域地質研究報告(5万分の1地質図幅)、産総研地質調査総合センター、71p.