ヨシモトコレクション剥製データベースで3Dモデルを公開!
ヨシモトコレクションとは?
はじめに
国立科学博物館ウェブサイトには「標本・資料データベース」があります。そのなかの「ヨシモトコレクション」剥製データベースで、今回新たに剥製標本を3DCGモデル化した「剥製3Dデータ“Yoshimoto 3D(β)”(リンクを新しいタブで開きます)」を公開しました。
ここでは、当館ヨシモトコレクションの概要から、3Dデータ作成の過程や今後の展望などについてご紹介します。

ヨシモトコレクションとヨシモト氏
ヨシモトコレクションはハワイの実業家である故ワトソンT.ヨシモト氏(1909~2004)より寄贈されたおよそ400点の剥製コレクションです。このなかには現在では調査が困難な地域の標本も多数含まれており、見た目が美しいだけでなく、きわめて学術的価値の高いコレクションです。
ヨシモト氏はハワイのオアフ島で、1909年に日系二世として生まれました。しかし、幼くして両親が他界、兄弟を養うためにプランテーションの大工として働き始めます。その後は独学で建築を学び、後に自らの会社を創立し、大きな成功を収めるに至りました。もとは家族の食料を得るために始めた狩猟でしたが、実業家として名を上げてからはスポーツとして世界中でハンティングを行いました。そうして収集した剥製コレクションは、当初ハワイの人々に野生動物の魅力を伝えるべく、オアフ島の博物館で公開されていました。そして、晩年にはコレクションの保存を考慮して、1997年に当館へと寄贈されました。なお、ヨシモトコレクションについてのより詳しい説明は下記サイトをご覧ください。
3Dモデル制作にあたって
3Dモデルの制作には「フォトグラメトリー」と呼ばれる技術を用いました。聞き慣れない言葉かもしれませんが、フォトグラメトリーはもともと地図や地形図を作るために発展してきた測量技術の一種です。デジタルカメラを使って対象となる物体の全方向から複数の画像を撮影し、それらをパソコン上に読み込み、専用のソフトウェアを用いて画像のもつ情報から撮影位置と対象物の立体形状を復元します。
今回公開したモデルについては、一体あたりおよそ250枚の画像を撮影しています。お腹の下側やしっぽの裏側なども撮影する必要があるため、結構な撮影枚数になります。
ただし、フォトグラメトリーによる3Dモデル復元には苦手なものもあります。フサフサしたものやツルツルしたものです。そのため、例えばシロイワヤギなどの毛足の長い剥製はあまり綺麗なモデルに復元されません。また、3Dモデルにする際、ガラス玉でできた眼球は必ずへこんでしまいます。
そこで、そのように上手く復元できない部分は、フォトグラメトリーの後に手作業で修正を行っています。

3Dモデルと博物館の展示~それぞれの良さをいかして

研究活動や創作活動などを行っている方々の参考資料になればとの思いから、このプロジェクトを開始しました。多くの方は博物館に足を運んでも、標本を好きな角度から観察するという機会に恵まれません。できることなら全ての人に実際に標本を手に取ってじっくりと観察していただきたいのですが、標本の維持管理の都合上、それは現実的に不可能です。そこでまずは3Dモデルを使って、擬似的にでも標本を自在に観察することのできる場を設けたいと考えました。
また、創作活動等の参考資料を探すという時に「博物館に行く」という選択肢がそもそも思い浮かばない方も多くいらっしゃるようです。そういった方々にも、インターネット上のコンテンツであれば浸透するのではないかと考えました。そしてこれをきっかけとして、博物館にも実際に足を運んでいただければと思います。
ウェブサイトに掲載された3Dモデルの剥製たちも、いずれはどこかの展示会でご覧いただく機会があるかもしれません(当館で展示する以外にも他機関に貸し出す場合があります)。そのような「どこへ行けば実物が見られるか」といった情報も、今後サイト上で掲載していきたいと考えております。やはり実物には3Dモデルにはない実物のパワーがあります。ぜひ博物館へご来館いただき、実物をご覧いただければ幸いです。
今後の展望
2017年10月現在、筑波研究施設収蔵庫に保管されている剥製のみを扱って3Dモデルを公開していますが、上野本館で展示されているものも準備が整い次第、モデル制作を行っていきたいと思います。
ヨシモトコレクションはおよそ400体の剥製からなります。いずれは全ての剥製を3Dモデル化し、公開していく予定です。ただ、なかには前述したように毛が非常にフサフサしているなどの理由で、すぐには3Dモデル化が困難なものもあります。時間はかかってしまうかもしれませんが、気長にお待ちいただけるとありがたいです。
また、3Dモデルの公開ページに関するご要望やご意見を随時募集しております(ご連絡はこちら(JP)まで)。例えば優先的に3Dモデルにして欲しい剥製などがあれば、ご要望をお寄せいただければ幸いです。ただし、制作工程の都合上、ご要望に沿えない場合がありますので、予めご了承ください。
なお、本プロジェクトはハワイにあるW.T. Yoshimoto Foundation Charitable Trustのご支援、およびJSPS科研費 JP17K12967の助成を受けて行われております。

<執筆・監修>
国立科学博物館 動物研究部脊椎動物研究グループ 研究主幹 川田伸一郎
国立科学博物館 動物研究部脊椎動物研究グループ 研究主幹 田島木綿子
国立科学博物館 動物研究部脊椎動物研究グループ 支援研究員 森 健人