植物とひと、生物資源としての植物

亜熱帯で育まれた琉球の植物は人々の生活を支え、豊かな文化をもたらしました。古くから利用されてきた植物に加え、
最近ではヤエヤマアオキなど新たな有用植物が見出され、生物資源としての琉球の自生植物が脚光を浴びています。

ソテツ
Cycas revoluta Thunb.(ソテツ科)
分布琉球列島各島・九州南部
幹や種子内部のデンプンは食用と利用されるほか、キーホルダーや 玩具などの材料ともなる。


ソテツでつくった味噌と粉

ビロウ
Livistona chinensis(Jaquin) R. Brown ex Martius var. subglobosa (Hasskarl) Beccari(ヤシ科)
分布琉球列島各島。日本九州・台湾
大きい葉は笠や蓑として、幹は蒸じ器などに利用される。庭木。街路樹としても植栽される。伊平屋島にはビロウの大群落からなる山(くば山)がある。


ビロウでつくったくば笠(撮影:横田昌嗣)

ゲットウ
Alpinia zerumbet (Pers.) Burtt et R.M.Sm.(ショウガ科)
分布大東諸島と尖閣諸島を除く琉球列島各島。小笠原諸島・台湾・東南アジア
月桃茶や琉球独特の餅、ムーチー(奄美ではカシャムチ)の香料として利用される。悪霊退散や長寿祈願の縁起物。


ゲットウの葉で包んだ餅(ムーチー)

ヤエヤマアオキ
ヤエヤマアオキL.(アカネ科)
分布沖縄諸島~八重山諸島・台湾~オーストラリア
血糖値を下げる効果や整腸作用があるダンナカンタール(ポリフェノールの1つ)を含むことがわかり、「のに茶」として脚光を浴びている。今後の自生地での乱獲が心配される。


ヤエヤマアオキからつくったのに茶

ガジュマル
Ficus microcarpaL.f.(クワ科)
分布琉球列島各島・台湾。中国南部~オーストラリア
琉球では聖なる樹として古くから崇められてきた。ガジュマルには、奄美諸島では「ケンムン」、沖縄県では「キジムナー」が宿るといわれている。これらの言い伝えには、人々を危険な場所に近づけさせない、自然を大切にする、といった自然への戒めがあり、自然の中に生きる琉球の人たちを災いから守ってくれる妖精といえる