2024-03-14

ハーバリウムと植物標本

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※この記事は以下のページで構成されています。ご覧ください。
(1)植物標本−その意義と優れた性質−
(2)ハーバリウム(Herbarium)の役割
(3)牧野富太郎と標本
(4)新種とタイプ

(4)新種とタイプ

(左)ミャンマー東部カヤ州のカレン丘陵から発見されたショウガ科ショウガ属の新種Zingiber procumbens Nob.Tanaka & M.M.Aung のタイプ標本。(右)ミャンマー中部の石灰岩地域から発見されたツリフネソウ科の新種Impatiens katjae Nob.Tanaka & J.J.Verm.。オランダから鑑定のために送られてきた標本が新種だったため共同で発表しタイプ標本が当館ハーバリウムへも納められた。

腊葉標本の最も重要な役割の一つに、学名の基準があります。新種などの新学名を発表した際の学名の基準となる標本をタイプ標本と呼びます。当館のハーバリウムには、約3,700点の維管束植物のタイプ標本が収蔵されています。
東南アジアは、地球上で植物の多様性が最も高い地域の一つです。最近の研究では、約10,000種の植物が未だに未記載であると推定されています。世界における東南アジアのフロラ研究では、2011年から2017年までの間に実に約3,000種もの新種が発表されています(Middleton et al. 2019)。現在、当館では総合研究「国際共同研究によるミャンマーの自然史の解明と研究拠点形成」を進めていますが、私が研究するショウガ科でも、同地の調査で毎年のように新種が発見されています。
そのハーバリウムに所属する分類学者が新種を記載すると、それらのタイプ標本がハーバリウムのコレクションに加えられることになります。多くのタイプ標本を所蔵していることはハーバリウムの存在価値を高めることになります。

<執筆>
国立科学博物館 植物研究部 陸上植物研究グループ グループ長 田中伸幸

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