2024-03-14

ハーバリウムと植物標本

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※この記事は以下のページで構成されています。ご覧ください。
(1)植物標本−その意義と優れた性質−
(2)ハーバリウム(Herbarium)の役割
(3)牧野富太郎と標本
(4)新種とタイプ

(2)ハーバリウム(Herbarium)の役割

(左上)当館のハーバリウム(TNS*)。(右上・左下)ロンドン自然史博物館のハーバリウム(BM*)は、世界の植物標本約560万点を収蔵する。赤いカバーに入っているのは、学名の証拠となるタイプ標本。(右下)シンガポール植物園のハーバリウム(SING*)は、ボックス型の収蔵形式。ボックスを手前に開くと標本が取り出せる。

このような優れた性質をもつ腊葉標本は、いつから作られるようになったのでしょうか?16世紀初頭にボローニャ大学の本草学者ルカ・ギーニが、冬季など花がない季節にも学生に薬草の形態を教えるために考案したとされています。当時は、標本を本のように綴じてめくって閲覧していました。これは"Hortus Siccus(乾いた庭園)"、"Hortus Hiemalis(冬の庭園)"と呼ばれていました。現存する最古の標本は、彼の弟子が作製した1530年代初めのもので、490年以上の歴史があります。1700年代になると標本の収蔵施設のことを"Herbarium(ハーバリウム)"と呼ぶようになり、これが今日に受け継がれています。つまり、腊葉標本は植物の研究・教育に実に500年もの間、形を変えずに使われ続けているのです。
ラベルには、その地域での呼び名(現地名)や利用法などが記録されていることもあります。ハーバリウムの標本群からは、特定の種の分布図を作成することもでき、時には新しい薬になる植物、作物の新たな育種の素材になる植物などを見出すこともできます。ハーバリウムは、世界の植物が一つの部屋に収められており、施設そのものが植物多様性と植物資源情報のデータバンクなのです。

*TNSやBMなどの記号は、世界のハーバリウムの所在地、連絡先、コレクションの特徴と数、キュレーターとその専門分野などが検索できるオンラインデータベースであるIndex Herbariorumに登録された略号。登録されたハーバリウムには、アルファベットで示されたコード(国際略号)が与えられる。

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(2)ハーバリウム(Herbarium)の役割
(3)牧野富太郎と標本
(4)新種とタイプ