2012-02-13

日本にはいったい菌類が何種くらいいるのでしょうか?


筑波実験植物園から日本新産のきのこ発見

 最近、国立科学博物館筑波実験植物園内で、これまで日本では知られていなかったきのこが2種類確認されました。これらのきのこは2010年6月及び2011年4月に園内で発見され、その系統学的検討と系統解析を行ってきました。が日本では未報告のものと確認されたのです。日本新産種とは、海外ではすでに報告があるものの、日本では未発見であったもので新種とは異なります。これらについては、学術的な報告として2011 年末に発行された『国立科学博物館研究報告(Series B)』に掲載されました。

 発見種について(1つめ)「トゲミノダイダイサラタケ」
2010年6月に園内の池の近くの土壌で発見されました。直径1mm 前後のオレンジ色の円盤型のきのこを形成する子嚢菌類の一種です。これは、Ramsbottomia asperior(ラムスボトミア・アスペリオール)という菌であることが判明しました。本種は、北米、南米、ヨーロッパ、ニュージーランドなどから知られていますが、今まで日本では報告がありませんでした。微小なきのこやカビには、まだよく知られていないものが多いのですが、現在のところ、このきのこは日本では唯一、筑波実験植物園でのみ見られるものです。

 このきのこの和名は「トゲミノダイダイサラタケ」と名付けられました。
和名の由来:胞子(身)に目立ったとげがあることから「トゲミ」、オレンジ色の皿状の子実体をつくることから「ダイダイサラタケ」ということで、「トゲミノダイダイサラタケ」としました。

 発見種について(2 つめ)「フタツミシロヒナノチャワンタケ」
2011 年の4 月にブナなどの樹木で構成されている冷温帯落葉広葉樹林から発見されたものです。1mmに満たない非常に小型の円盤型のきのこを形成する子嚢菌類の一種です。Proliferodiscus alboviridis(プロリフェロディスカス・アルボヴィリディス)という名前の菌であることが分かりました。世界ではアメリカ、オーストラリアから報告がありますが、他の地域からの報告はありません。また、この研究途上で、すでに2006 年に群馬県から得られていた未同定の標本も本種であることが判明しました。開園30 年近くなり、園内の樹林帯がやっと成熟してきたのがこのきのこが生育できた原因なのかも知れません。

 このきのこの和名は「フタツミシロヒナノチャワンタケ」と名付けられました。
和名の由来:胞子を生じる層に再び新たな子実体(身=)をつくることから「フタツミ」、分子系統学的にはシロヒナノチャワンタケという菌と類縁性があるので、「フタツミシロヒナノチャワンタケ」としました。

 日本には、現在12,000 種ほどの菌類が知られていますが、実際にはこれよりずっと多くの菌類がいるものと考えられ、今回の発見は、身近な場所からもじっくり調査をすることによって、まだ未報告の菌が発見される可能性があることを示しています。今後の研究に期待されます。


監修・協力
細矢 剛 植物研究部 菌類・藻類研究グループ グループ長