2012-02-13

日本にはいったい菌類が何種くらいいるのでしょうか?


日本における菌類相データの集積



 菌類の多くは、植物に病気を起こします。その植物が人類にとって有用なものであれば、人類の利害に直接結び付くので、日本における菌類学は農学の一分野である植物病理学の重要分野として発展しました。

日本産の菌類のリスト(インベントリー)は、1905年植物病理学者の白井に始まり、1917年に三宅、1954年に原へと引き継がれ、近年、2010年に勝本によって集大成となりました。この中には2008年までに出版された日本産菌類がリストされています。この間、白井の1,200種から、12,000種もの数へと記録された種数は増加しました。この後、出版された種については、日本菌学会のデータベース委員会がそのデータを集積しています。一方、日本の菌類誌は1936年伊藤誠哉により始まりましたが、まだ完結していません。

◆未報告の菌類はどこに?
 Hawksworthが言うように、総現存種数が150万、既知の現存種数が9.7万だとして、その比を日本の現存種数1.2万に当てはめれば、日本の総種数は18.6万程度となりますが、本当にそうなのでしょうか?

まず、日本に亜熱帯地方があることを考えると、もっと多いと考えられます。ビョウタケ目ヒアロスキファ科の菌類の研究を例に考えると、調査開始時点の1989 年では10 属42種であったものが、現在では21 属80 種あまり存在することを明らかになり、この他に多数の未同定種が存在すると考えると、経験的に少なくともこの倍程度は存在するのではないかと推測されます。

 日本には2,500種程度のきのこがあるとされていますが、実際には、この倍程度が存在するのではないかといわれています。これに加えて、日本では未調査あるいは調査が乏しい分野として、水辺あるいは水中の菌類、生植物体内生息菌(エンドファイト)、昆虫体内・体表生息菌、深部土壌環境生息菌などがあげられます。地域別に考えると、特に亜熱帯地方のものについてはまだ調査が行き届いていないようです。これらの種類が判明し追加されることによって、日本の菌類種数は大幅に増えるものと考えられます。


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日本産菌類集覧