2011-11-07

ホトトギスの托卵に対するウグイスの対抗手段‐リスクの変化に対応して防衛行動を調節している!


今回行われた『剥製提示実験』とは?そしてその結果の解説!

今回の実験の詳細について見てみましょう。

【実験を行った場所】
伊豆諸島三宅島(島内全域)
畑の周辺の竹藪です。特に、密に茂った成長中の若い竹藪にウグイスは多く営巣します。

【実験の方法】
1.まず、竹藪の中を歩いて観察し、ウグイスの巣を探します。
2.ウグイスの巣の前1mのところにホトトギスの剥製を設置し、3〜5m 離してビデオカメラをセットします。
3.観察対象の巣から8m以上離れて、ひとまず(観察者の)身を隠します。
4.ウグイスが剥製を見つけるとやかましく鳴くので、鳴き始めから1 分間で実験を中止します。
剥製・カメラを片付けに行きます。
5.ハトの剥製には殆ど反応せず鳴かないので、剥製とビデオをセットしたらその場を離れます。
1 時間後に戻って片付けます。後ほど録画を再生し、ウグイスが帰巣してから(剥製を見つけてから)1分間の行動を記録します。

 巣防衛は目立つ行動なので、捕食者やホトトギス(本物)を誘引する可能性があります。捕食や托卵を誘発しないため、ホトトギスに対する実験は1分間で終了しました。ハトに対しては目立つ行動を取ることはないので、これらの心配ありません。何れの場合も、実験によって捕食や托卵を誘発したことはありませんでした。

■今回の実験の結果について
 ホトトギスの剥製を巣の前に置くと、ウグイスはそれを激しく攻撃しました。しかし、無害なキジバトの剥製にはほとんど反応しませんでした。このことから、ウグイスは托卵にやってきたホトトギスから巣を守り、托卵を妨げるものと考えられます。

 さらに、ウグイスは托卵をされるリスクに応じて、巣の防衛行動を調節していました。ウグイスは暖かい地方(例えば関東地方低地)では4 月に繁殖を始めますが、夏鳥として渡来するホトトギスが托卵を始めるのは6 月になってからです。ウグイスはホトトギス渡来前よりも渡来後に、剥製を激しく攻撃しました。
(グラフ1参照)

 今回の実験によって、『ウグイスは托卵されてからではなく、托卵される前に対抗手段をもつこと』が明らかとなりました。托卵に抵抗できないように見えるウグイスの親も、人の目に触れない形で托卵回避を行っていました。しかも、ホトトギスを元々認識できるが、托卵されるリスクが高い時期になると厳戒態勢をとるように防衛行動を調節することがわかりました。


◆おわりに◆
 托卵もそして、それに対する防御も、子孫を残すための行動として、ウグイス、ホトトギスどちらも必死の重要な行動と言えるでしょう。
 研究によって、行動学についての新しい発見を聞いた上で、改めてウグイスやホトトギスについて見かけると、また違った印象を受けるかもしれません。