2011-11-07
ホトトギスの托卵に対するウグイスの対抗手段‐リスクの変化に対応して防衛行動を調節している!
ウグイスVSホトトギス〜ウグイスに対するホトトギスの托卵(たくらん)と反応
カッコウ類は他の鳥の巣に自分の卵を産み込んで育てさせる”托卵(たくらん)”の習性をもちます。ホトトギスは、もっぱらウグイスを托卵の相手(宿主)として利用します。托卵を受けてしまったウグイスは、ホトトギスの卵・雛の世話をする羽目になるうえ、ホトトギスの雛がウグイスの卵を巣外に捨て去ってしまうために、自分の子をまったく残すことができません。
カッコウの宿主の中には、卵の模様や色からカッコウの卵と自分の卵を区別して巣外に捨てたり、托卵に気づくと巣を放棄して再び営巣したりして、托卵を拒否するものがいます。しかし、ウグイスとホトトギスの卵はいずれもチョコレート色で模様がなく、区別が難しいのか、ウグイスがホトトギスの卵を区別して托卵を拒否する行動は見られません。
ウグイスはその分布域で広くホトトギスの托卵を受けていますが、ホトトギスがいない北海道では同じくカッコウ科のツツドリによる托卵を受けます。ホトトギスはほぼウグイスのみに托卵します。伊豆諸島では、イイジマムシクイ、ウチヤマセンニュウにも托卵していますが、主な宿主はやはりウグイスです。ウグイスの巣は、ホトトギスの渡来期以降46〜54%が托卵を受けます。繁殖期を通じての被托卵率は21〜24%です。
東京大学の樋口広芳博士はかつて、ウグイスの巣に人工の卵を入れて反応を調べました。ウグイスは白やピンクの卵を入れると巣を放棄しましたが、なんと赤い卵は抱き続けたのです。ウグイスは托卵を拒否しようとしていますが、ホトトギスの卵擬態が勝っており、卵を区別できずにいる状態のようです。
参考:Higuchi、 H. 1989. Responses of the bush warbler
Cettia diphone to artificial eggs of
Cuculus cuckoos in Japan. Ibis 131: 94–98.