| ホーム ≫ 研究と標本・資料 ≫ 標本・資料データベース ≫ フラボノイドコレクション ≫ 機能性について |
ヒトをはじめとする好気生物は呼吸によって酸素を取り入れ、エネルギーを得ています。しかし、体内に取り込まれた酸素の一部は、エネルギー代謝の際に電子伝達系で還元を受け、スーパーオキシドアニオンラジカル(O 2・-)、過酸化水素(H2O2)、ヒドロキシルラジカル(・OH)および、一重項酸素(1O2)などの活性酸素種(ROS,Reactive Oxygen Species)に変化し、細胞などに損傷を与えることがあります。そのため、生物の多くはROSを抑制・消去し、体を守る抗酸化と呼ばれる機能を持っています。喫煙やストレスなどにより体内のROSと抗酸化機能のバランスが崩れると、老化や生活習慣病などの一因になることが知られています。フラボノイドを含むフェノール化合物は抗酸化能を有することから、食品等からの抗酸化物質の摂取とヒトの健康維持に係る研究がすすめられています。
[図1.フラボノイドの一種であるアントシアニンは抗酸化活性を有することで知られる(左 ハイビスカスティー、右 茨城県伝統野菜の赤ネギ)]
親水性酸素ラジカル吸収能測定(H-ORAC,Hydrophilic-Oxygen Radical Absorbance Capacity)は国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構食品研究部門(農研機構食品研)において、水溶性化合物を対象とした、抗酸化能測定法です。国立科学博物館のフラボノイドコレクションは、フラボノイドの多様な構造と抗酸化活性の関連性を明らかにするため、農研機構食品研と共同研究を行っています。
※ H-ORAC法の詳しい測定手法は、Watanabe et al.(2012)および、H-ORAC 分析法標準作業手順書(PDF:369KB)をご覧ください。
[図2.H-ORAC値と構造の関係(Mizuno et al., 2024をもとに作図)]
農研機構食品研との共同研究では、フラボノイドコレクションのデータを機能性成分の探索にも生かす試みが行われています。励起蛍光マトリクス(EEM, Excitation Emission Matrix)は試料に照射する励起光の波長を連続的に変化させながら試料成分の蛍光スペクトルを測定する手法です。 成分を特徴づける励起波長(Ex) 、蛍光波長(Em)、成分量を示す蛍光強度からなる3次元データが得られ、その図が指紋に似ることから蛍光指紋とも呼ばれます。試料の成分分布を網羅的に可視化するEEMは産地判別、危害要因の検出、健康機能性など複雑な食品品質の評価などへの貢献が期待されます。
[図3.EEM測定によって得られた蛍光指紋の例(左がフラボノイドの一種 Herbacetin 3-O-glucoside-8-O-glucuronide、右がタンニンの一種1,2,3,4,6-Pentagalloylglucoseのデータ)]