2025年6月26日
最終の分析結果を公表し
航海プロジェクトがついに完結!

3万年前の黒潮は今よりも速かったらしい
それでも丸木舟はあの海を渡ることができた

サイエンス・アドバンシス誌に発表した2本の論文

Kaifu et al. Science Advances 11, eadv5507 (2025)(外部サイト)
Chang et al. Science Advances 11, eadv5508 (2025)(外部サイト)

2019年丸木舟航海の動画(6分)を公開しました!
※長編は映画『スギメ』をご覧ください。

丸木舟航海の短編動画(6分)

3万年前の航海 徹底再現プロジェクト
ドキュメンタリー映画『スギメ』
2021年7月17日オンデマンド配信開始!!

3万年前の航海 徹底再現プロジェクト、ドキュメンタリー映画『スギメ』2021年7月17日オンデマンド配信開始!!

国立科学博物館が企画・製作し、博物館として初めて科学技術映像祭文部科学大臣賞を受賞した「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」のドキュメンタリー映画『スギメ』の配信が始まります!
この配信開始のキックオフイベントとして、7月10日(土)に「スギメ」航海成功2周年記念ライブを配信します。

詳細は映画公式サイトへ!
https://www.kahaku.go.jp/sugime/

実験航海成功の後もさらなる企画が進行中

実験航海でたどった航路(画像クリックで拡大します)

ご声援ありがとうございました!丸木舟到着!
(©太田達也)

2019年7月9日、台湾からやってきた1艘の丸木舟が、与那国島に到着しました。舟の名はスギメ。乗っていたのは男女5人。星や太陽を頼りに針路を定める古代の航海法で、黒潮を越え、水平線の彼方にある島を目指して225キロメートルを漕ぎ切ったのです――

これは、国立科学博物館が行った実験航海。今から3万数千年前に、「最初の日本列島人」が成し遂げた大航海を再現しようとする、一大プロジェクトでした。実験活動は2019年に終了しましたが、そこから解けてきた謎をお伝えするため、5つのメニューを用意しています。

謎を知るための5つの企画

① 表も裏も、「発見と興奮の全て」を知るにはこれ

「サピエンス日本上陸 3万年前の大航海」
海部陽介著 講談社

プロジェクトリーダーによる、祖先たちの謎に挑んだ実験の全記録! 個性的な仲間たちと体当たりで繰り返してきた数々の実験、現地での予期せぬ騒動、丸木舟航海の秘話、そして台湾の山から見えたものなど、他では語られていない話が満載です。実験の失敗から学び、改善を繰り返し、最後に成功させたプロジェクトの軌跡は、一読の価値あり。

② 「黒潮の海」を前に思いを馳せる絶景ポイント

記念碑と丸木舟クルー達 ©太田達也

実験航海の舞台となった、与那国島を訪れてみませんか?
そこは旅行ガイドで「日本最西端」と紹介されますが、見方を変えれば日本列島への「南の入口」。2020年3月に実験成功の記念碑が建てられた 西崎 いりざき へ行けば、眼下に広がる黒潮の海の彼方からやってきた、祖先たちに思いを馳せることができます。天気がよければ台湾が見えます。

③ 祖先たちの大航海を「体感」できる博物館のドーム

シアター36〇」の球体ドーム

3万年前の大航海を体験できるのは、丸木舟に乗っていた5人だけ……ではありません!
国立科学博物館の全球型映像施設「シアター36〇」の球体ドームに入れば、スギメの船首につけられていた3DVRカメラの映像を通して、あなたも丸木舟の航海を体験できます。仲間と一緒に、「見えない島」を見つけましょう!
④ 実験の現場を見る映画

航海プロジェクトの実験は、与那国島、台湾の東海岸、能登の山など各地で行われましたが、その映像記録がドキュメンタリー映画が完成いたしました。タイトルは『スギメ』、第62回科学技術映像祭文部科学大臣賞を受賞しました。Amazon プライム・ビデオ、U-NEXT、dTVほか各動画配信サービスにて配信を開始します。

詳細は映画公式サイトへ!
https://www.kahaku.go.jp/sugime/

⑤ もっと深く詳しく知りたいという方は

このプロジェクトは、科学的研究の一環として行われました。ですので、その成果は、学術論文として世界へ発信していきます。論文は研究者向けですが、奥深いところにも興味がある方は、ぜひ読んでみてください。

その1:
竹筏舟の実験成果をまとめた論文で、イギリスの歴史ある考古学専門誌に掲載。こちらから無料でダウンロードできます。
Palaeolithic seafaring in East Asia: testing the bamboo raft hypothesis
※本論文は「その週の注目」としてNature誌に紹介されました。
On a model ancient raft, seafarers are up the current without a paddle
その2:
2019年の丸木舟の実験航海は、ニュースとしてScience誌に紹介されました
Update: Explorers successfully voyage to Japan in primitive boat in bid to unlock an ancient mystery
その3:
新しい島で人口を維持するには、何人の集団が渡る必要があるか?
A demographic test of accidental versus intentional island colonization by Pleistocene humans
この論文は有料ですが、以下に日本語の解説記事があります。
人類はいかにして島に渡ったか:人口シミュレーションによる「漂流説」の検討
その4:
3万年前の琉球列島への移住は偶然ではなかった -旧石器人の漂流説を否定する新たな証拠-
こちらから無料でダウンロードできます。
Palaeolithic voyage for invisible islands beyond the horizon
その5:
草束舟の可能性を探る
この論文は有料ですが、以下で英文の概要を読むことができます。
Establishing the efficacy of reed-bundle rafts in the paleolithic colonization of the Ryukyu Islands
その6:
実験航海プロジェクトの理論と丸木舟実験より前までの成果をまとめた論文
こちらから無料でダウンロードできます。
A synthetic model of Palaeolithic seafaring in the Ryukyu Islands, southwestern Japan
その7:
2019年の本番の実験航海の最終レポート2本
こちらから無料でダウンロードできます。
Palaeolithic seafaring in East Asia: an experimental test of the dugout canoe hypothesis
Traversing the Kuroshio: Paleolithic migration across one of the world's strongest ocean currents

本実験プロジェクトは、クラウドファンディング(2016・2018年の2回で総額5978万円)と、日本と台湾における寄付・募金で実現することができました。ご支援頂いた大勢の皆様に、深く感謝申し上げます。