日本の生物多様性ホットスポットの構造に関する研究(Biological Properties of Biodiversity Hotspots in Japan)

「多様性ホットスポット日本」の生き物たち

代表的な日本固有種、国内の多様性ホットスポットに生息する種、日本を分布の中心とする種など、「多様性ホットスポット日本」の重要な構成要素と考えられる生物を、プロジェクトに参加している様々な分類群が専門の研究者たちが紹介します。

ヤシャゼンマイ

ゼンマイ科

Osmunda lancea Thunb.

植物界-維管束植物門-シダ綱-ゼンマイ目

山菜として有名なゼンマイに一見そっくりだが、羽片とよばれる小さな葉の断片1つ1つがほっそりしている、それがヤシャゼンマイである。渓流沿いの、増水すれば完全に水没するような岩にのみ生える。ゼンマイはそのようなところには生えない。

ヤシャゼンマイとゼンマイは雑種が簡単にできるほど縁が近い。ヤシャゼンマイよりやや川から離れた場所に、雑種オオバヤシャゼンマイがよくみられる。ゼンマイは東アジアに広く分布する一方で、ヤシャゼンマイは日本固有で、北海道から九州まで広く分布する。そのためヤシャゼンマイは、日本で生まれ、日本各地に広がった新固有種と考えられる。これまでヤシャゼンマイの多様性と起源について調べたところ、遺伝的多様性は高く、ゼンマイとは多くの遺伝子で配列パターンが異なり、起源は古く数百万年前と考えられた。ヤシャゼンマイは、ゼンマイと交雑しながらも、渓流沿いという変わった環境で種を維持してきたと考えられる。(植物研究部・堤 千絵)

分布 日本固有種(北海道~九州)
絶滅危惧(環境省) 絶滅危惧(IUCN)

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