総合研究

分野横断的な総合研究の推進

 これまで蓄積されてきた基盤研究等の成果,並びに現下の状況や政府方針等を踏まえ,研究期間を定めて行う総合研究を実施する。 総合研究においては,分野横断的なテーマについて研究を実施し,国内外の研究者・研究機関等とも共同して研究を行う。

国際共同研究によるミャンマーの自然史の解明と研究拠点形成

 自然史の基礎情報を欠くミャンマーで,植物,菌類,藻類,地衣類,動物,地学各分野の連携によるインベントリー調査を現地の天然資源・環境保全省等との共同研究として実施し,多数の分類群からなるミャンマーの標本・資料及びDNA解析用試料などを収集し,新産種・未記載種を含む種の多様性についての研究を進めることで,世界有数のミャンマーの自然史コレクション構築を図るとともに,同国の自然史解明に貢献する。また,日本政府の援助で現地に建設される生物多様性研究センターにおいて標本作製・収蔵・管理体制の技術移転と人材育成の強化を図り,同センターを長期的視点に立ったミャンマー自然史研究の拠点として整備する。

環境変動と生物変化に関する実証的研究
-様々な時間尺の環境変化に対する形態や機能変化を捉える-

 深刻化の一途を辿る温暖化など環境変動の生物に及ぼす影響等を理解するために,様々な時間スケールに沿った環境変化に対する生物の形態や機能の適応や変化を多角的に比較・考察し,進化的変化に共通のメカニズムが存在するのかを実証的に検証する。このことにより,進化生物学への新たな展開にも繋げる。また同時に,域外保全等人為的な環境変動による生物変化も視野に,人間活動による急速な環境変動に伴う生物変化の新たな問題も検証する。

過去150年の都市環境における生物相変遷に関する研究
−皇居を中心とした都心での収集標本の解析

 地球規模や都市部での著しい環境変動による生物の影響を明らかにするために,大規模都市緑地である皇居生物相調査などを実施し,都心で採集された過去150年の標本の比較により生物相や種内での変化を調べるとともに,都市部の生物が受けている選択圧について遺伝的に解析し,見出された変化と人間活動との関わりについて考察する。

極限環境の科学

 地球表層において一般的な動植物が生存できない極限環境(深海・極地・火山・高地)をつくりだす地学現象と,それに対して生態系がどのように適応しているのかを分野横断型の調査・研究から明らかにする。またこれらのアクセス困難な地域から学術的価値が高い希少な岩石・生物標本を収集し,国内外をリードするナショナルコレクションを構築する。