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生活改善展覧会出品ポスター

 流しやレンジの整った台所に立って食事を作る。椅子に座って食事を食べる。家族一緒に居間でくつろぐ。衛生的な水洗トイレで用を足す。こんな当たり前な生活を日本人が送るようになったのは、いったいいつ頃からでしょうか。明治になって文明開化の世を迎えると、鉄道が敷かれ、ガス灯がともり、洋風の建物が建設されるなど、西洋の文化や技術が次々に日本に入ってきました。しかしながら人間の生活に最も密着した「住」生活に関しては、近代的な住生活がどの様なものなのか理解しづらかったこともあり、なかなか普及しませんでした。
 大正時代になると、高等教育を受け経済的に余裕を生じてきた「サラリーマン」層が増大し、都市やその近郊に一戸建ての住宅を建てる需要が増えてきました。これらの人達は西洋の文化に対する理解も早く、伝統的な日本の住宅の欠点を理解し、より住みやすい住宅を求めるようになりました。同時に、建築の専門家や文部省等の行政機関など、当時の国民を取り巻く社会情勢も住生活を改善するための啓発活動に熱心に取り組み始めました。
 文部省が行った住生活に関する啓発活動の1つに、国立科学博物館の前身である東京教育博物館で開催した『生活改善展覧会』(1919(大正8)年11月30日~1920(大正9)年2月1日)がありました。この展覧会は不合理な伝統的生活法をいかに改善するか、その方法を様々な展示物を通じて示すことを目的に開催され、「飲食物」「被服」「住居」「儀礼」「社交」「公聴」「家庭内職」「雑」の8つの展示テーマで構成されていました。そのうち「住居」の部門では、図面や模型、調査の結果報告等が展示され、主婦のための部屋、子供のための部屋、集合住宅、田園都市、規格住宅等々に関わる各種の提案が示されました。
 この展覧会の展示物は、建築図面の一部が当時の雑誌に掲載され紹介されている他はその消息が分かりませんが、展示に使用された解説画(展示パネル)のみが今に伝えられています。解説画は水彩で描かれ、鮮やかな色彩でユーモラスに描かれた絵を主体に、伝統的住生活の欠点と近代的住生活への改善点をわかりやすく示してあります。
 このような啓発活動によって日本人の住生活は、主人(家長)の為の部屋や客間を重視した生活から居間などの家族が使用しくつろぐ為の部屋を重視した室構成に変化し、床の上にじかに座る生活から椅子を用いる生活となり、しゃがんだり座って調理をしていた台所が立って機能的に振る舞える台所へと代わるなど、現代の住生活に通じるものに改められるようになったのです。
 「日本人の住生活を近代的にしたのは、国立科学博物館だった。」といってしまうのは、ちょっと言い過ぎでしょうか?

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