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理工電子資料館

幕末の工作機械 竪削り盤

 この工作機械は、竪削り盤と呼ばれるもので、上下動する刃物で、工作物に溝を切る機械です。1863(文久3)年にオランダのFYENOOD(地名)にあったNSBM(オランダ蒸気船会社)で、江戸幕府の注文で製作され、日本に送られました。日本では、ちょうどその頃、国産の蒸気船を製造しようという気運が盛り上がり、そのために長崎製鉄所(現在の三菱重工長崎造船所。当時は造船所と呼ばず製鉄所と呼んでいました)を拡張するために注文された一連の機械の中に、この竪削り盤もありました。ところが機械が到着するころ、兵庫の海軍操練所や横須賀製鉄所の建設計画が持ち上がり、遠地の長崎製鉄所拡張計画は中断され、1864(元治元)年に到着した竪削盤を含む機械の一部は、新設の鹿児島島津藩の集成館機械工場用として転売されました。
 集成館は、明治維新(1868年)後は陸海軍の所管となり、西南戦争(1877[明治10]年)等を経て島津工場として操業しましたが、明治末には閉鎖され、機械類も売却されたのです。竪削り盤も他の機械と共に、佐賀県の深川造船所に移され、さらに会社の倒産、買収を経て、1939(昭和14)年に北九州市の機械工場に設置され、以後実に1998(平成10)年まで現役で稼働し続けました。当時オランダから輸入された機械は、ほとんど残っていませんが、戦前まで使用され、現在、国指定の重要文化財として長崎造船所で保存されている1856(安政3)年製の竪削り盤があります。この2つの竪削り盤は、実は全く同じ出所の工作機械なのですが、ひとつは上述したような数奇な運命をたどり、江戸時代から130年以上もの長い間、知られることなく日本の近代化に貢献してきたのです。

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