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理工電子資料館

オットー4サイクル内燃機関

 国立科学博物館地球館2階に展示しています本機関は、イギリスのクロスレー社の製作によるオットー・4サイクル・ガス機関で、1887(明治20)年頃にイギリスより購入されたことが分かっており、1937(昭和12)年に東京帝国大学工学部(現在の東京大学工学部)より寄贈されたものです。
 内燃機関の考え、すなわちシリンダー内へ燃料を入れ、その燃焼もしくは爆発によってピストンを動かし、力を取り出す考えは、17世紀末にホイヘンスやパパンが発表しています。ホイヘンスらの考えはシリンダー内に火薬を入れ、その爆発で中の空気を外に排出し、その後の冷却によるシリンダー内の減圧でピストンを動かすものでした。しかし、当時では排気弁や密閉度の高いピストンやシリンダーを作ることは難しく、火薬の爆発もうまく調節できなかったため、実用のものにはなりませんでした。
 その後火薬に変わって、石炭をコークス化するときにでるガスを利用した内燃機関が、19世紀初め頃から現れはじめました。1860(万延元)年、ガスを使った実用的な内燃機関を最初に考案したのはフランスのルノアールです。彼の機関は、これ以前に考案、試された種々の要素をまとめあげたもので、複動式蒸気機関と同じようにピストンの両側で交互にガスを爆発させ、一回転で2回の有効行程を得るようになっていました。ガスの点火には、この時代になって発見された電気を利用しています。この機関はガスと空気の混合気が無圧縮であったため、0.5~3馬力程度の小さな動力しか出せませんでしたが、当時イギリスやフランスで500台くらい使用されました。
 ルノアールの機関は考え方や機構が蒸気機関の応用的なものでしたが、1862(文久2)年にフランス人ロシャによって、内燃機関で効率を上げるための理論的考察がなされました。それは、吸気、圧縮、爆発、排気の4サイクル内燃機関の発明でした。この理論を実行したのが、1876(明治9)年のドイツ人オットーです。彼の圧縮型ガス内燃機関は、吸気弁に蒸気機関と同じスライド弁を用い、点火はまだ信頼性の低かった電気点火ではなく、直接炎を混合気に点火するものでした。このオットー・4サイクル機関はルノアールの機関に比べ効率が数倍向上し、また非常に静かだったため、サイレント機関と呼ばれたそうです。現在の内燃エンジンの音を考えれば、当時の動力機関がいかにうるさかったか、想像できます。さて、オットーのガス内燃機関は、蒸気機関に比べて始動、操作性の点で劣るところはありましたが、当時問題になっていた蒸気機関のボイラー爆発がないことや、小規模工場では蒸気機関より経済性が良かったこと、設置の容易さなどから、盛んに使用されるようになったのです。
 博物館にあるクロスレー社のガス機関は、炎の直接着火方式や、吸気部のスライドバルブ方式を持った初期のオットー・4サイクル・ガス機関です。銘板には、「CROSSLEY BROTHERS LIMITED MANCHESTER.」とあり、製造番号No.9515となっています。現在もイギリスに残るクロスレー社からの調査返答によれば、「当社の記録によると、エンジンNo.9515は、回転数は不明だが6馬力のオットー・ガス機関である。1886(明治19)年6月末、ロンドンのD.W.Bellが横浜に輸出するために供給されている。」ということでした。また、イギリスのマンチェスターにある科学技術博物館にNo.15104が、ドイツのKlockner-Humboldt博物館には、No.4110の同種のクロスレー社製ガス機関が保存されている事も分かりました。当館のものは知られる限りで、世界に現存する2番目に古い、非常に貴重なエンジンなのです。

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