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理工電子資料館

池貝鉄工所製 英式旋盤

 英国製工作機械を模して作られたもので、現存する国産工作機械としては最古のもののひとつです。その後の日本の本格的工業化の始まりを示す貴重な資料といえます。
 当時の池貝工場は、JR山手線の田町駅から浜松町駅に向かう途中に見える、現在の竹芝小学校の前あたり、かつての芝金杉川口町にありました。1889(明治22)年5月、その小さな町工場が創業を始めました。若干20才の池貝庄太郎とその弟12才の喜四郎、仕上げ師1人、車廻し1人のわずか4人だけのこの工場が、現在の工作機械メーカー池貝鉄工株式会社の始まりです。この時、工場に備わっていた機械は、英式12フィート(3.6m)と6フィート(1.8m)旋盤の2台だけでした。しかし、資本力のない町工場では、これ以上高価な外国製工作機械を購入するのは無理なことでした。そこで庄太郎は2台の旋盤を自製しようと考えたのです。しかしながら、当時の日本において工作機械の自製などと言うことは、誰も考えない画期的なことでした。当時はこうした工作機械だけでなく、船や汽車、各種機械のほとんど全てを輸入に頼っていたからです。
 庄太郎達は、自工場内の英式旋盤との現物合わせを頼りに、手廻しの旋盤と手作業によって部品を作り、池貝鉄工株式会社が独力で製作した最初の旋盤、英式9フィート(2.7m)旋盤を作り上げたのです。英式旋盤の外見上の特徴としては、(1)ベット面(刃物台の動く部分)が平らであること、(2)ベッドの左寄り(主軸側)に切り落としと呼ばれる凹部があり、半径の大きな物も加工できるようになっていること(通常は橋がつけられ平面として使用される)、(3)刃物(バイト)の送りのための送り棒が旋盤後方にある、等があげられます。
 現在、国立科学博物館に保存、展示されているこの旋盤は、昭和始め頃まで民間の町工場で使用されていたといいます。製作されてから約40年の間、第一線で稼働していたということは、初期の国産工作機械の優秀性を示しており、歴史的な価値をより高めるものです。また、2.5m近くある親ネジの加工やベッドの平面加工、歯車や軸受け部等の製作は、当時の状況を考えれば、大変な苦労だったと思われます。

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