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理工電子資料館

サイクロトロンのイオン加速箱

 当館には、日本で戦後初めて建造されたサイクロトロンのイオン加速箱部分が収集・保存されています。これは、理化学研究所(理研)の3号機のもので、日本の戦後の加速器科学の記念碑というべき貴重な資料です。
 サイクロトロンは、直流電磁石による磁場の中で円周運動しているイオンを高周波電圧によって繰り返し加速し高速にする装置で、原子核研究や放射性同位元素の製造など広範囲に用いられます。1930(昭和5)年にアメリカの物理学者アーネスト・ローレンス博士によって発明され、彼はこの発明により1939年(昭和14)年ノーベル物理学賞を受賞しました。1937(昭和12)年に理研で仁科芳雄博士を中心として磁極直径が65cmのものが作られました。1943(昭和18)年には磁極直径150cmという大型のものが完成しています。
 1号機は戦時下という困難な時期にもかかわらず原子核や生物学などの研究で大きな成果をあげましたが、終戦直後の1945(昭和20)年11月に当時日本を占領していたアメリカ軍によって2号機と共に解体され、東京湾に沈められました。これはサイクロトロンが核兵器の製造に関係するものと誤解されたためで、仁科博士が「原爆とは関係ない」と兵士に訴える姿はアメリカの写真報道誌「ライフ」にも大きく掲載されました。発明者のローレンス博士はこうした事情を憂い、1951(昭和26)年5月に来日した際にサイクロトロンの再建を提言しました。この提言にもとづいて翌年12月に完成したのが理研の第3号サイクロトロンです。磁極直径が66cmで、重陽子の加速エネルギーは約400万電子ボルト(※)に達します。
 放射性同位元素の製造などの応用面を中心に活躍した後、理研が文京区・本駒込から現在の埼玉県和光市に移転作業を進めていた1970(昭和45)年4月に分解され、イオン加速箱の部分が当館に寄贈されました。電磁石の部分はその後理研跡地にある日本アイソトープ協会の建物(旧理研23号館)の脇に記念碑と共に長い間保存されていましたが、2021(令和3)年に理研和光地区に移設されました。
※ 1価のイオンを400万ボルトの電圧で加速したときのエネルギーに相当する。


旧理研敷地内(現日本アイソトープ協会)に保存されている電磁石部分(撮影:1980年代)

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