2010-02-15

アメリカ,NASAに行ってきました!宇宙飛行士訓練施設見学レポート


NASAの将来と日本の宇宙開発

 NASAの使命は,『宇宙の探索と科学的発見,航空工学の研究に於いて,未来を切り拓く先駆者となること(NASAホームページより)』です。ロシア,日本など15ヶ国の協力による国際宇宙ステーションの建設と運用は勿論のこと,ハッブル宇宙望遠鏡などの宇宙望遠鏡・科学衛星・探査機などの開発,観測にも世界各国の科学者・技術者が参加しています。
 少なくともこの2点に於いては,軍事競争としての宇宙開発はなりを潜めたと言って良いでしょう。


 その一方,今年いっぱいでのスペースシャトル退役(※4)に,次世代の有人宇宙飛行計画『コンステレーション計画(※5)』の中止も重なり,今後のアメリカの有人宇宙開発が何処へ向かうのかはなかなか見えて来ません。

 間もなく完成するISSはこの先どうなって行くのでしょうか。
 昨年10月のこのコーナーでもご紹介しましたが,日本のHTVは,スペースシャトル以外で唯一,貨物室に与圧部と非与圧部の両方を揃えた宇宙ステーション補給機です。スペースシャトルの引退後,実験パレットなどステーションの外で使用される資材を運ぶことのできる唯一の補給機となります。また,搬出・搬入口の大きさもロシア,ESAの補給機より大きく,シャトルと同サイズとなっているため,大型物資を搬入できる機体としても唯一となります。ISSの運用に日本が果たす役割に対する期待は,今後大きくなっていく筈です。
 宇宙飛行士の往復は,ロシアのソユーズが一手に担うことになります。ソユーズの搭乗人数は3人で,7人が乗るのが一般的なシャトルと比べ小ぶりです。しかし1971年を最後に死亡事故を起こしていないこと,実用的な緊急脱出システムを持つことなどから安全性への評価は高く,使い捨てのため技術の進歩に合わせた改良も容易です。

 アメリカが今後有人飛行に対して消極姿勢に転換する,という訳でもないようではあります。ロケット,有人宇宙船共に開発が大幅に遅れていたコンステレーション計画を中止し,浮いた予算の一部を民間による有人ロケットの開発や,深宇宙へ向かう新たなロケットエンジンの開発に回すとしているからです。
 アメリカ国内の意見からも賛否両論が聞かれますが,この際徹底的に議論し,より良い形で持続可能な宇宙開発を続けて行ってくれることを願ってやみません。

※4 1981年に初飛行したスペースシャトルは,これまでに120回を超える打ち上げを行って来ました。飛行士が搭乗する軌道船,固体燃料補助ロケット,外部燃料タンクの3つを組み合わせて打ち上げ,打ち上げ途中で補助ロケットと燃料タンクを順次切り離して軌道船だけが地球周回軌道に到達します。燃料タンクは使い捨てですが,軌道船と補助ロケットは耐久力こそ異なるもののそれぞれ再利用することができます。
 機体の再利用は打ち上げ費用の節減に繋がると期待されましたが,メンテナンスに毎回多額の費用が掛かる上,近年では機体の経年劣化も心配されるようになりました。1986年のチャレンジャー打ち上げ時の空中爆発事故,2003年のコロンビアの大気圏再突入時の空中分解事故と2度の大事故を起こしており,原因究明や安全性の向上に多くの時間と,更なる費用が必要にもなりました。

※5 スペースシャトルの後継となる有人宇宙飛行計画として,2004年に当時のブッシュ大統領によって提唱された『新宇宙政策』に基づいて計画されました。目的地はシャトルのような地球周回軌道やISSではなく,再びの月着陸の後火星を目指すとされていました。
 ロケット『アレス』はスペースシャトルでの反省に立って使い捨てに戻し,人間を打ち上げるアレスTと,主に物資を運ぶためのアレスXの2種が開発される予定でした。アレスで打ち上げる宇宙船『オリオン』も大気圏内でしか使えない翼を廃して,アポロ時代に近いカプセル型とすることにしました。アポロにはなかった太陽電池パネルを備えることで,長期間の宇宙飛行にも十分な電力を確保できる計画でした。

写真:昨年行われたアレスTの打ち上げ実験(NASA/Jim Grossmann)
計画の終了により,最初で最後の打ち上げとなってしまいました。

(研究推進課 西村美里)