2010-02-15

アメリカ,NASAに行ってきました!宇宙飛行士訓練施設見学レポート


宇宙に飛び立つ前に…宇宙飛行士の訓練

 スペースシャトルに搭乗する全ての宇宙飛行士が絶対に避けては通れないもの…それが訓練です。
 シャトルの運用に関わるか,関わらないか(※2)によってメニューは異なっており,例えばシャトルの運用に携わるミッションスペシャリスト(搭乗運用技術者)を目指す場合の訓練には,NASAの組織そのものについてや,宇宙科学,宇宙工学などの基礎を学ぶ座学や,小型飛行機に搭乗しての操縦や通信,ナビゲーションを身につけるもの,飛行機への搭乗前には緊急時に備えた脱出やサバイバルの実習,スペースシャトルのシステムや実際の操作の座学と実習などがあります。
 これら一連の訓練を終えてミッションスペシャリストとなった後も,訓練は続きます。シャトルの貨物の宇宙への放出や,地球を周回する衛星のシャトルへの格納などを行うロボットアームの操作の訓練や,船外活動に備えての訓練,乗り組むミッションが決まった後は,ミッションの内容に特化した訓練や,実際の飛行のシミュレーションが行われます。


 Neutral Buoyancy Laboratory(無重量環境訓練施設)では,プールを使って宇宙の無重量状態に近い環境を再現し,船外活動の訓練を行っています。
 縦31.1メートル,横61.5メートル,深さ12.2メートルのプールに,スペースシャトルとISSの実物大模型(モックアップ。ISSの太陽電池パネルなど,訓練と直接関係しない部品は割愛されています)が沈められており,宇宙服を着た飛行士が潜って船外での作業をシミュレーションします。1度に5人の飛行士が同時に訓練することができ,飛行士それぞれに対してダイバーが4人ずつ付き添って飛行士の補助や緊急時の救助にあたります。
 宇宙服を着込み,時として作業に必要な沢山の器具を運びながら船外作業をする飛行士が,シャトルやISSの構造物に引っ掛かってしまわないかどうか。手袋をして太くなった手が,構造物の間を通って必要な箇所に届くかどうか。手すりを掴んだり足掛けに足を掛けたりして身体を固定した状態で,限られた時間内になおかつ正確に,必要な作業をこなせるかどうか。船外活動1時間に対し,訓練は5時間から複雑な作業では1日の限度を6時間として,日を跨いで12時間に及ぶこともあります。
 勿論実際の宇宙空間ではない以上,プールには限界もあります。水中では宇宙と同じように,真横や逆さまの姿勢でも作業をすることができますが,地球の重力はなくならないため,長時間逆さまで作業していると頭に血が上ってしまいます。また,宇宙ではほんの僅かな力で自分の身体や器具などを移動させることができ,止めようとする力が加わらない限り1度移動を始めたものは何処までも移動し続けます。水の中では全く逆で,動き,動かし続けるためには常に力を加え続ける必要があり,力が加わっていないものはいずれ止まってしまいます。

 打ち上げの際の緊急脱出や着陸の訓練は,実物大のシャトルの模型で行われます。
 模型は水平(シャトルが地上に降りて来た時の姿勢)と垂直(シャトルの先端が上を向いた状態)の2種類があり,水平のものは着陸訓練の他,シャトル内での写真撮影の訓練にも使用されています。

※2 スペースシャトルに搭乗する宇宙飛行士には,コマンダー(船長)とパイロット(操縦士),ミッションスペシャリスト,ペイロードスペシャリスト(搭乗科学技術者,PS)の4種類があります。
船長はシャトルを操縦するだけでなく,飛行中のシャトルの安全な運用に責任を負います。操縦士はシャトルを操縦し,船長を補佐します。MSはシャトルの運用を担当し,ロボットアームの操作や船外活動などを行うほか,操縦士の補佐にもあたります。PSは宇宙で実験などを行う場合に必要に応じて乗り込む科学技術者で,シャトル自体の運用に参加することはありません。このため,ミッションの内容によってはひとりも乗っていないこともあります。

備考:
実物大模型を使っての訓練,及び次ページでご紹介しているISSでの生活時間,宇宙ごみについては,ジョンソン宇宙センターにご滞在中の若田光一宇宙飛行士にご説明を頂きました。若田さん初めセンターの皆様には,貴重なお時間を頂きありがとうございました。

写真上:無重量訓練プール(水中に見えているのはシャトルの模型)
下:スペースシャトル実物大模型