2009-12-07

続報:新型インフルエンザ ― ワクチンの働きと免疫


ワクチンと免疫

 今回の新型インフルエンザは,人類が今までに経験したことのない,新しいタイプの病原体(高齢の方では近いタイプのウィルスに感染した経験があり,ある程度の免疫があるとも言われています)です。
 ワクチンの効果についてご説明する前に,先ずワクチンの接種を受けていない,なおかつ今回のように1度も同じ病原体に感染した経験のない状態で,病原体が体内に入った場合,身体に何が起こるかを簡単に見ておきましょう。

 インフルエンザウィルスは,発症者の咳やくしゃみで飛び散る唾液,鼻水などに多く含まれています。その飛沫を吸い込んだり,飛沫の付着した手で口や目などに触れると,ウィルスが体内へ侵入してしまいます。
 体内へ入ったウィルスは,鼻やのどなど,主に呼吸器に関する細胞に取りついて内部に入り込みます。これが感染です。
 ここからはインフルエンザに限りませんが,生体防衛の第一歩は白血球の一種,好中球やマクロファージがウィルスや死んだ細胞を捕食(貪食)によって取り込み,増殖の阻止を試みることから始まります。特にマクロファージは取り込んだ病原体の情報を他の免疫システムに知らせる働きを持っています。これを抗原提示と言い,これによってリンパ球(白血球の種類のひとつ)の一種,ヘルパーT細胞が活性化します。
 ヘルパーT細胞は免疫反応の司令塔とも呼べる存在です。ヘルパーT細胞の働きによってマクロファージの活動はより活発になります。更にヘルパーT細胞は,B細胞と呼ばれる別のリンパ球の中から,自身が受けた抗原情報に対応するものを選択的に活性化させ,抗体の生産を促します。
 B細胞は細胞ごとに,各々決まった抗体を生産することができます。抗体は病原体に取りついて病原体を凝集させるなどして,好中球やマクロファージが捕食しやすいよう手助けをするほか,それ自体が病原体の感染力や毒性を弱める働きを持つこともあります。
 1度病気が治癒した後も,活性化したB細胞の一部は記憶細胞となって長く残り,病原体の情報を記録しています。この記憶細胞のおかげで,同じ病原体が再び侵入した時には1度目より素早く抗体が生産され,感染や発症を抑えることができるようになります。

 さて,今度はワクチンを接種した場合です。
 インフルエンザのワクチンは,感染力を失わせた(不活化)インフルエンザウィルスに更に化学的な処理を加えたもの(作り方は次のページで述べます)を主成分としています。ウィルスは接種によって体内に入りますが,感染力を失っているため,細胞内に入り込んだり増殖することはほぼないとされています。
 しかし,たとえ感染がなくても,体内に異物が侵入していることには変わりありません。マクロファージによる捕食からB細胞による抗体の産生まで,一連の反応が本物のウィルスの侵入時とほぼ同じように起こります。その結果記憶細胞が残り,万一本物のウィルスの侵入が起こった際に,素早い抗体生産が可能になります。

写真:新型インフルエンザウィルス(CDC/C. S. Goldsmith and A. Balish)