2008-06-15

世界最古級の被子植物化石,日本で発見(協力:地学研究部 植村和彦,植物研究部 加藤雅啓)


被子植物の分類と進化

 被子植物は長い間,双子葉類と単子葉類の2種類に分類されてきました。ごく一部の例外を除いて種子が発芽する際一番初めに出る葉(子葉)が1枚か,2枚かで区分できるというわかりやすい分類です。学校で習った,という方も多いのではないでしょうか?


 ところが1990年代以降,分子系統学の見地から,特にこれまで双子葉類としてひとくくりにされてきた植物について,幾つかの系統に分けられることが分かってきました。

 分子系統学では生物同士のDNAの塩基配列を比較することで,それらの生物の進化をどこまでさかのぼって行けば共通の祖先に行き当たるのか,生物同士がどの程度近い「親戚」関係にあるのかを知ることができます。他の生物との共通の祖先がより古い時代にしか存在しないもの,つまり他の生物からより古い時代に分岐したものほど原始的な生物だということができます。

 被子植物ではアンボレラ科の分岐が最も早く,次いでスイレン目,アウストロバイレヤ目(アウストロバイレヤ科・シキミ科・トリメニア科)が分岐しました。クスノキやモクレンなどを含むモクレン類も比較的古いグループです。ショウブやユリ,イネ,ツユクサなどを含む単子葉類は良くまとまったグループですが,モクレン類と近縁関係にあります。そしてこれまで双子葉類と呼ばれてきた植物のうち,初期に分岐したものを除くほとんどの種は,モクレン類と単子葉類を含むグループと共通の祖先を持つ,別のグループ(真正双子葉類と呼びます)としてまとめられています(右上図を参照)。


 アンボレラやスイレン,トリメニアなど原始的な被子植物の起源は,何処にあるのでしょうか?今回のトリメニア科化石の発見により,現在原始的な被子植物が生き残っている南半球が必ずしも被子植物誕生の地とは言えない,ということが明らかになりました。


 確実に被子植物といえる最古の記録は,イスラエルから見つかった約1億4000万年前の白亜紀初め頃の花粉化石です.少し遅れてクラバティポレニーテスと呼ばれる花粉化石はヨーロッパ,アメリカ,南アメリカなど南北両半球から知られています。

 1998年に中国で発見されたアルカエフルクトゥスは,水草様の葉・茎に果実(袋果)をつけた見事な化石です。この化石の時代はジュラ紀後期と考える研究者もいますが,化石層に近接した火山岩の放射年代から,上記の花粉化石よりも少し若い時代と考えた方がよさそうです。


 被子植物の誕生の場所は未だ謎のままですが,少なくとも白亜紀には北半球を含め,世界中に拡散していったことは確かです。

 被子植物の起源について議論するためには,北海道の種子化石のように,形質の情報が多く質の高い化石の探索が強く望まれます。