2008-06-15

世界最古級の被子植物化石,日本で発見(協力:地学研究部 植村和彦,植物研究部 加藤雅啓)


白亜紀の被子植物化石,北海道で発見

 北海道三笠市の約1億年前の地層,(中生代白亜紀の蝦夷層群)から1999年に採集された種子の化石(国立科学博物館蔵)が,現在ではオセアニアなど南半球だけに分布する原始的な被子植物,「トリメニア」の仲間の種子であったことが明らかとなり,金沢大学の山田敏弘講師(前国立科学博物館地学研究部),国立科学博物館などのグループによって先月発表されました。
 長さ3ミリ,幅(径)2ミリ程度の小さな種子化石ですが,種子の微細組織が良く保存されています。厚い層状に発達した外種皮や内種皮の構造などから,現生のトリメニア科植物の種子と同じ特徴を持っていることが観察できました。


 トリメニア科やアンボレラ科,アウストロバイレヤ科など,最も原始的な被子植物の多くは南半球にのみ分布しています。
 南半球にある現在の大陸は,ゴンドワナ超大陸が白亜紀以降次第に分裂して生まれたものです。このため,被子植物の起源はゴンドワナ大陸ではないかとこれまで信じられてきました。しかしそれを具体的に証明できる化石記録はほとんど見つかっていませんでした。
 今回の発見によって,トリメニア科の植物が1億年前に北半球の中緯度地域に存在していたことが明らかになりました。1億年前は,被子植物が急速に発展する少し前にあたります。
 今回の発見は,被子植物の起源がゴンドワナ大陸であったとする考えに疑問を投げかけるものです。トリメニア科植物はほかの原始的な被子植物と同様に,ゴンドワナ大陸起源というよりも,白亜紀以降の変遷をへて現在のオセアニアに残っている遺存植物と見るべきことを,北海道の小さな化石は示しています。


※1 蝦夷層群は北海道のほぼ中央部を南北に貫く形で分布しており,南は浦河町付近から北は稚内市,更にはサハリンへ続いています。およそ1億2000万年前から6800万年前の海で堆積した地層で,アンモナイトやイノセラムスなど多くの海生動物化石が豊富なことで知られています。
 とくに保存の良い化石は石灰質のノジュール中に含まれていますが,その中には木材や葉,種子などの植物片がしばしば見つかります。西側のアジア大陸から流されてきた“ゴミ”のようなものですが,植物の細胞組織が見事に残された“宝物”とも言うべき化石です。


写真上:種子化石と現生トリメニア種子の顕微鏡写真
(2枚の写真を同じ縮尺で半分ずつ左右に貼りつけたもの)
下:現生のトリメニアの花
(共に金沢大学大学院自然科学研究科 生命科学専攻 植物自然史分野 山田敏弘講師提供)