2008-01-01

2008年注目科学ニュース去年今年


2007年科学の話題を振り返って(7月〜12月)

7月16日:新潟県上中越沖で,マグニチュード6.8の新潟県中越沖地震が発生しました。新潟県長岡市,柏崎市,長野県飯綱町の一部で震度6強を観測しました。このうち新潟県柏崎市には東京電力の柏崎刈羽原子力発電所があり,地震発生と同時に運転中の全ての原子炉が緊急停止しましたが,地震発生から約12分後,変圧器のひとつで火災が発生,また微量ながら放射性の水の漏洩も発生しました。設計時の基準を大きく上回る加速度が掛かったことや,設計当初は耐震上考慮する必要はないと考えられていた海底断層が活断層であったことが判るなど,耐震設計の妥当性が大きく問われました。
現在でも7機全ての原子炉が点検等のため停止しており,発電の再開の見通しは立っていません。

8月16日:岐阜県多治見市と埼玉県熊谷市で気温が40.9度となり,これまでの国内最高気温を74年ぶりに更新しました。これまでの最高気温は1933年7月25日に山形市で観測された40.8度でした。
この日,多治見市・熊谷市以外でも埼玉県越谷市で40.4度,群馬県館林市で40.3度,岐阜県美濃市40.0度と計5地点で40度を超え,これらを含む全国25地点で観測史上最高気温を記録しました。
東太平洋の赤道付近で海水温が低下する「ラニーニャ」現象が原因の猛暑と考えられ,夏は高温かつ太平洋側では降水量が増える傾向があります。

8月28日:日本全国で皆既月食が見られました。国立科学博物館でも特別観望公開を予定していましたが,当日の関東地方は生憎の大雨。他地域では概ね見ることができたと聞いていますが…残念な結果となってしまいました。日本で次に皆既月食を見ることができるのは2010年12月です。

9月12日:インドネシア,南スマトラ沖でマグニチュード8.4の南スマトラ地震が発生しました。インド・オーストラリアプレートとユーラシアプレートとの境界であるスンダ海溝を震源とするプレート境界地震でした。同地域では2004年に発生し大きな被害を出したスマトラ島沖地震・津波を初め,ここ100年でマグニチュード7以上の地震が30以上発生しており,活動期が今も続いていると考えられています。

9月14日:月探査衛星,「セレーネ」が打ち上げられました。愛称の一般公募には1万件を越える応募があり,最も多数寄せられた「かぐや」が採用されました。
「かぐや」は10月4日に月軌道に到着,続く9日,12日にはそれぞれ「おきな」「おうな」と名づけられた2つの子衛星の分離に成功しました。これまでに月への途上で撮影された地球のハイビジョン映像や,月上空100kmまで接近しての月面のハイビジョン映像など世界初の映像の撮影に成功しており,来年の本格観測への期待が高まっています。

10月1日,気象庁が緊急地震速報の提供を開始しました。地震の揺れには大きく分けて,振幅はそれほど大きくないものの伝達速度の速い縦波,P波で伝わる初期微動と,伝達速度は遅いものの揺れは大きい横波,S波がもたらす主要動があり,震源ではふたつが同時に発生します。震源に近いところでは2つの波の到達時間はほぼ同じですが,震源地から距離が開くほど,S波はP波より遅れて到達するようになります。緊急地震速報はこの2つの波の到達時間の差を利用したもので,震源に近い場所で観測したP波のデータを元に,震源からある程度離れた場所に対してS波の到達時間を知らせるものです。現在のところ一般向けの緊急地震速報では,『地震波が2点以上の地震観測点で観測され,最大震度が5弱以上と推定された場合に』『強い揺れ(震度5弱以上)が推定される地域及び震度4が推定される地域名』(気象庁HP)が発表されることとなっています。

12月,京都大学再生医科学研究所の山中伸弥教授のグループが,ヒトの皮膚細胞から人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作成することに成功しました。
通常,動物の細胞は一度何らかの器官に分化してしまうと分化する前の状態に戻したり,別の器官に作り変えたりすることはできません。しかしもし動物の細胞を培養してある特定の器官や組織をつくることができれば,病気や事故で失ってしまった器官や組織を,患者自身の細胞から再形成することができるかもしれません。
その方法のひとつとして考えられてきたのが,受精卵を利用した胚性幹細胞(ES細胞)でした。ES細胞作成の途上で受精卵を壊す必要があるほか,組織や器官を形成した後患者に移植する際の拒絶反応を防ぐためには患者本人のクローンを作成する必要があるなど,倫理的問題が多いとされて来ました。
iPS細胞は,患者本人の体細胞からつくることができ,ES細胞と同じように様々な組織や器官に分化できる可能性(万能性)を持っています。受精卵を壊す必要も,クローンをつくる必要もありません。アメリカ・ウィスコンシン大学のチームも作成成功を発表しており,今後国際競争が激化することが予想されます。


(研究推進課:西村美里)