2021-03-05

「令和2年7月豪雨」で被災した人吉城歴史館所蔵の植物標本レスキュー(Part.1)

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前原勘次郎コレクションの被災
現地からの標本搬出から乾燥・修復着手まで
標本の損傷状況と修復作業

現地からの標本搬出から乾燥・修復着手まで

(左上)当館筑波研究施設に冷蔵便で到着した被災標本(2020年8月6日)。(右上)冷凍室に収容された被災標本(2020年8月6日)。(下)被災標本を受け入れた全国の博物館等35機関の分布図。

 人吉城歴史館を管理する人吉市から依頼を受ける形で、熊本県博物館ネットワークセンターの職員が現地から同センター(宇城市)への搬出を開始したのは7月15日、被災から既に11日が経過していました。復元された櫓の中に保管されていた押し葉標本は、水位1.5m以上の浸水によってごく一部を除いて水に浸かり、水に浮かんだ棚から床に落下したものもありました。被災標本点数は約3万点、過去に経験のない大規模なレスキュー活動が必要な状況でした。水を吸ってずっしり重くなった標本は、冷蔵輸送での制限重量に収まるよう小分けにされ、標本の一時受け入れを表明した博物館等に向けた発送が始まりました。ところが、7月22日の段階で、段ボール200箱分以上の未発送標本が残っているにもかかわらず、受入館のスペースがほぼ埋まってしまいました。追加の受け入れ先を募ると共に、先に受け入れをした機関では修復処理を急ぐことによって追加の受け入れのスペースを捻出する努力が続けられ、最終的には人吉からの直接搬入が可能な熊本県内の冷凍スペースも確保された結果、ようやく全標本が安定した保存環境下に置かれることになったのは、被災から1カ月以上が経過した8月10日頃のことでした。

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