2018-07-26

「広域施設間における展示協力〜寄生虫をテーマとした特別企画展(下関市立しものせき水族館「海響館」)」

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標本資料をより有効に活用するために
寄生虫を展示するねらい
連携や協働が重要なわけ

連携や協働が重要なわけ

 海響館の前身である下関市立水族館に、私はかつて大変お世話になりました。当館が35年間(1967〜2001年)という長期にわたり実施した「日本列島の総合的自然史科学的総合研究」で瀬戸内海を調査した時(1998〜1999年度)、私は同水族館のご協力のもとに日本固有の小型鯨類、スナメリの寄生虫調査を行い、2000年には水族館の方々と共著で論文を出版しました(Kuramochi et al., 2001 [Mem. Natn. Sci. Mus., Tokyo, (33): 83–95])。「海響館は寄生虫が好き」なのかどうかは解りませんが、そのような縁もあって、今回ご依頼をいただきました。
 今回の特別企画展は、山口県の海響館と東京都の目黒寄生虫館、そして当館という、地理的に離れた施設間で標本、映像、画像、情報を出し合い共有して、「寄生虫のおもしろさ」を発信するものですが、地域や背景が異なる施設が連携する中で、同時にそれぞれの個性が生かされています。海響館はフグの展示が売りで、この展示でもフグの仲間やマンボウの寄生虫を出展しています。また、豊田ホタルの里ミュージアム(下関市)からはハリガネムシ(類線形動物)の標本を借用して、最新のハリガネムシ研究の成果を紹介しました。さらに目黒寄生虫館は創始者である故・亀谷 了博士による研究で知られるフタゴムシ(吸虫類)、当館は鯨類の寄生虫と2013年に行った企画展の資料をもとに日本住血吸虫を出展しました。
 こうした連携や協働を通して相互に交流することで、広域の博物館等のそれぞれの現状について情報共有がなされ、やがては地域の博物館等の魅力を向上させ、機能強化につながるものと考えています。このような活動を、当館は今後さらに活発かつ広範に展開していきます。

下関市立しものせき水族館「海響館」
山口県下関市あるかぽーと6番1号
特別企画展示は2018年10月28日まで

<執筆監修>
国立科学博物館 動物研究部長 倉持利明


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