2013-07-18

最古の霊長類の全身骨格化石が発見された!− 中国で発見されたメガネザルの仲間の化石


霊長類はどのように研究されているのでしょうか?

 現生霊長類の分類では、従来はキツネザル・アイアイ・ロリス・メガネザルなどを総称して「原猿」<げんえん>として、新世界ザル(中南米のサル)や旧世界ザル(ニホンザルを含むオナガザル類)と、ヒトに近縁な類人猿(ホミノイド)をまとめて「真猿」<しんえん>とされていましたが、その後の分子系統解析などにより、「原猿」の中でもメガネザルはむしろ「真猿」に近いことが示されるようになりました。
 そこでかつての「原猿」からメガネザルをのぞいたものを「曲鼻猿類」<きょくびえんるい>として、「真猿」にメガネザルを加えたものを「直鼻猿類」<ちょくびえんるい>とする分類区分が提唱されました。「真猿」のまとまりは今も有効ですが、「原猿」は単系統群ではないということで有効でないとされるようになっています。

 真猿の起源をめぐっては、現生のキツネザルなどに似た化石霊長類グループの「アダピス類」と、現生のメガネザル似の化石霊長類グループの「オモミス類」の、どちらが祖先にあたるのかについて、長年の間、統一見解が得られていませんでした。
 2009年にはドイツのメッセルで見つかっていた大変保存状態のよい霊長類全身化石が、「人類へつながるミッシング・リンク」だとして、大きな話題となりました。「ダーウィニウス・マシレァェ(Darwinius masillae)」と命名された約4700万年前のこの化石は、体長が60cm程度と比較的大型で、顔面や歯、足の特徴などから、「アダピス類」に属するものと判断されました。ところがこの化石が現生キツネザルの特徴である「カギ爪」と「櫛状の切歯」を持たないことから、そもそもアダピス類が現生キツネザルの祖先ではなく、真猿類の祖先を含むグループの一員として位置づけられる、との結論が提示されました。
 しかし専門家の間では、論文の著者らの分析方法や結論に対する疑念も強く、また論文発表日に合わせて関連するドキュメンタリー本が発売され、テレビ番組も放映されるなど、メディア向けの宣伝が行き過ぎた感も強く、あまり歓迎されませんでした。この資料は約4700万年前という古さにしては例外的に保存が良く、資料そのものの重要性は誰も否定しないのですが、「売り出し方」が少々やりすぎであったようです。