2012-12-25

小さな化石から様々な情報が読み取れることをご存じですか?


大量絶滅と珪藻の起源




















 わたしの専門は珪藻化石です。珪藻は現在とても繁栄している単細胞藻類の1グループで、その化石は新生代から多産します。というわけで、もっぱら新生代(6500万年前以降)の環境に興味をもっているのですが、それよりずっと前の環境について扱ったこの話に引き込まれました。なぜなら、生きた珪藻の遺伝子を解析した結果から、珪藻の起源をペルム紀/三畳紀境界の2億5千万年前ごろではないかと推定する説もあるからです。ペルム紀/三畳紀境界において大量絶滅が起こり、いなくなった生物の代わりに新しい生物が出現して繁栄していくというシナリオが考えられており、珪藻はその新しい生物の1つなのかもしれないというのです。中生代には珪藻と似た細胞の構造や葉緑体の色素をもつ藻類(円石藻や渦鞭毛藻)が台頭してきたことが、それらの化石が多産することから分かっています。珪藻は化石としてまだ見つかっていないだけで、珪藻もこの時代に地球上に現れた可能性があるのではないかと考えてもいいのかもしれません。しかしながら、現在の珪藻の分布域の水温を考えると、この40度という高温に珪藻が繁茂していたとは考えにくいと思います。地球上に誕生したばかりの珪藻が現在の珪藻と同じような環境に生育していたという確かな根拠もないのですが、40度の水温にはきっと耐えられなかっただろうなと思うのは、わたしだけでしょうか。

このように、過去の地球環境が解明されつつあります。微化石について様々な分析がすすむと、さらに様々なことが新たに分かっていくことでしょう。この地球がどのような環境であったか、皆さんも是非想像してみてはいかがでしょうか。

地学研究部 環境変動史研究グループ 齋藤めぐみ

参考:
地球館地下2階の常設展示より「3. 絶滅と進化をうながす地球環境(地球環境変動の記録、生物の大量絶滅、環境変動と生物の変遷、微化石)」

参考図書:
谷村好洋・辻 彰洋 編著「微化石−顕微鏡で見るプランクトン化石の世界(国立科学博物館叢書13)」2012年、東海大学出版会
井上 勲 著「藻類30億年の自然史−藻類からみる生物進化・地球・環境 第2版」2007年、東海大学出版会
Sun, Y., Joachimski, M.M., Wignall, P.B., Yan, C, Chen, Y., Jiang, H. Wang, L. & Lai, X. 2012. Lethally hot temperatures during the Early Triassic greenhouse. Science vol. 338(サイエンス2012年10月19日発行), 366–370.