2012-12-10

光合成する植物と光合成しない植物の雑種が世界ではじめて開花


「根も葉もない」進化の解明へ

 根も葉もない、光合成もしないというと、生き物として退化した存在のように感じますが、ほかの生き物から栄養を横取りして生きるのは、実は巧妙で洗練されたやり方です。そして植物が光合成しないということは、植物が植物をやめるに等しい大胆な進化とも言えます。

 これまで葉を失う進化=光合成をしない植物の進化と考えられてきましたが、実際には、根を作らない性質、地下の茎に共生菌のすむ場所を提供する仕組み、共生菌をだましながら栄養をうばい取る仕組み、反対に共生菌に食べられてしまわないよう防衛する仕組み、菌からのわずかな栄養でも生きていけるよう体を小さくし短い時間で開花し実をむすぶ仕組みなど、さまざまな特性が進化してはじめて、植物は光合成せずに生育することができるのです。

 つまり「根も葉もない」進化は、あるひとつの遺伝子が変化してできるようなシンプルなものでないので、今回開発した植物を使った遺伝子解析が重要な意味を持つのです。

 そして植物が菌を巧妙に利用して栄養を奪い取る仕組みが遺伝子のレベルで分かれば、光合成に適さない暗い場所での農業や、作物が炭水化物を生産する性能を上げることにつながるかもしれません。




植物研究部 多様性解析・保全グループ(筑波実験植物園) 遊川 知久