2011-12-26

旧石器時代のアジアでの「現代人的行動」の出現に関する国際シンポジウムが開催されました!


実際の証拠を目の当たりに!「野外巡検---世界最古の狩猟用落し穴とは?」

 11/27(日)にAPAシンポジウム(アジア旧石器協会の日本大会)を開催し、翌日の11/28(月)には世界でも例のない旧石器時代の狩猟用落し穴が見つかる静岡県沼津市で、野外巡検を行いました。ここでは野外巡検の様子を紹介したいと思います。

 当日、2台のバスに乗って東京を朝7時発、沼津市へと向かいました。ここは富士山のふもとにある愛鷹山。85名の参加者たちが群がるその先には(写真上段右)、“大きな深い穴”が掘られています(写真中段)。

 わざわざ掘ったこの“穴”ですが、実は、世界最古の狩猟用落し穴が見つかる地層の断面を参加者に実際に見てもらうためなのです。今回は葛原第W遺跡の調査が終了した部分を選んで断面を作りました。見学のためとはいえ、本当の遺跡を壊してしまうわけにはいきませんので。この場所からは落し穴は見つかっていませんが、付近の別の場所で落し穴が見つかる層位を、この断面に示しました(写真中段中央・右)。

 発掘において、どの地層から遺物・遺構が発見されたかは、年代を決める重要な証拠になります。この場合は、直上の黒い地層より上位が乱れていないので、この地層が堆積する前の約3万1000年前頃に、落し穴が掘られたことが確実にわかります。参加者が実物を自分の目で見ることで、世界でも他に例のない旧石器時代の狩猟用落し穴の存在を、納得してもらうことができました。さらに、愛鷹山の遺跡について詳しいレクチャーと出土した石器の観察会を行い、この地域の遺跡への理解を深めてもらいました。
巡検の後は、遠くに富士山を眺めながら沼津港でおいしい日本の魚料理を食べ、海外からの参加者も皆満足して帰途につきました。

 なお、この巡検はAPAシンポジウムと合わせて日本旧石器学会のメンバーが主体となって準備しました。ご協力くださった沼津市文化財センター、講演会場を貸してくださった沼津市立看護専門学校、そして沼津市のご協力に感謝いたします。