2011-04-26

100年ぶりに発見!ヒメモヅルの新種


本研究の重要な点 --- 博物館の“標本を保管して後世に伝える”という重要な役割

 今回発表したヒメモヅル属の研究論文の特徴は、単に新種の記載ができたことだけでなく、各国の博物館の所蔵するタイプ標本やその他の標本も合わせて観察することで、1つの属の種の分類を全体的に再検討できたところにあります。

 「博物館」という言葉を聞いて、「展示」を行う施設と思う人も少なくないでしょう。確かにそれは博物館の大事な役割の1つではありますが、博物館の最も重要で本質的な役割は、標本の半永久的な保管と、それに基づく研究活動に他なりません。博物館において、これらの標本が、良好な状態で保存されていたからこそ、今回の研究成果が得られたのです。もしこれらの標本が失われていたら、この地球上に、どのようなヒメモヅル属が生息しているかという事実について明確な答えは得られなかったといえるでしょう。

 また、みなさんが目にする展示も、これまで博物館が収集してきた標本を用いて行われており、その標本を正しく理解できる研究者なくしては、作ることができません。研究者の研究成果が展示に反映されているのです。
博物館では,それぞれの研究者は,「標本を保管して後世に伝える」という博物館の重要な役割を担っているとともに、将来それを担うことができる次世代の若き研究者を育てようとしています。



監修・協力
国立科学博物館 動物研究部 藤田 敏彦
東京大学大学院 博士後期課程3年 岡西 政典