2010-07-16

生き物から教えてもらう技術 !---「バイオミメティクス」研究最前線


博物館の自然史研究とバイオミメティクス

 この「バイオミメティクス」の研究には、様々な研究機関、大学、博物館などの研究者や企業が広く総合的に関わっていくことでしょう。その中でも、様々な生物の標本やそれにまつわる情報・資料をもつ科学系博物館の役割はどのようなものでしょうか。海外では、科学系博物館が関わって開発を進められる例が多々あるようです。

 国立科学博物館における生物系の研究は、専ら自然史科学という最も基礎的な分野を担っています。解明されたことが「すぐ人の暮らしに役立つ」というような応用科学的な研究は、各研究者レベルでの研究では関連することがありますが、全ての分野をわたった関係性としては、これまで直接的な関わりが少ない状態だったといえるかもしれません。

 科学系博物館が所有する様々な大量の標本、そして、すでに蓄積している生物に関する豊富な知識や情報が、この「バイオミメティクス」の研究に関してよりいっそう深く関わることで、実際に役立つものとして見える形となる可能性があります。生物系の研究の幅もよりいっそう広がり、社会的に貢献出来る内容も広がるのではないでしょうか。そして、バイオミメティクスの研究成果が自然史科学研究にフィードバックされることも期待できるでしょう。


協力・監修
下村 政嗣 科学技術動向研究センター 客員研究官
東北大学原子分子材料科学高等研究機構・多元物質科学研究所 教授
友国 雅章 国立科学博物館 動物研究部長

参考文献
・「次世代バイオミメティック材料の研究動向と異分野連携」に関するジョイントシンポジウム2010年6月8日(火)会場:国立科学博物館日本館  シンポジウム資料
(http://poly.tagen.tohoku.ac.jp/biomimetics-symposium.pdf)
主催:バイオミメティクス研究会
共催:(独)国立科学博物館、(独)科学技術振興機構、(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構、(独)産業技術総合研究所、(財)化学技術戦略推進機構、北海道立開拓記念館、(国)九州大学先導物質化学研究所、(国)北海道大学電子科学研究所、(国)東北大学原子分子材料科学高等研究機構、(国)東北大学多元物質科学研究所
後援:経済産業省、(社)高分子学会、日本応用動物昆虫学会、日本昆虫学会、日本比較生理生化学会、応用物理学会有機分子・バイオエレクトロニクス分科会、(社)日本表面科学会、(社)日本化学会コロイドおよび界面化学部会、(社)日本機械学会バイオエンジニアリング部門、(社)日本機械学会流体工学部門、エアロアクアバイオメカニズム研究会、(社)表面技術協会、(株)日本経済新聞社

・下村政嗣「生物の多様性に学ぶ新世代バイオメティック材料技術の新潮流」 Science & Technology Trends, May 2010(http://www.nistep.go.jp/achiev/results02.html)