2010-07-16
生き物から教えてもらう技術 !---「バイオミメティクス」研究最前線
この生き物からこんなことが!
では、これまでの所、具体的にどんな生き物の特徴から技術となった例があるのかを見てみましょう。
・蓮の葉っぱに学んだ!超撥水性、超親水性
蓮の葉の表面には数ミクロンスケールの凸凹が配列しており、その微細構造とさらにそこから分泌されるワックス状化合物の相乗効果で、超撥水性とセルフ・クリーニング効果を示すことが見出されています。撥水機構を人工的に再現することに成功して、塗料が開発されています。さらにバラやひまわりなどの花弁も超撥水性と強い吸着力をもっていることが知られており、注目されています。
・サメ肌リブレット構造を持つ競泳着
オリンピックで注目された競泳用水着では、水着の表面に鮫肌リブレットと呼ばれる構造が付けられていました。リブレット構造とは、数十ミクロンの間隔の周期的な溝で、この構造を取り入れると、流体の抵抗摩擦が少なくなることが知られています。レース用のヨットの船体や航空機の機体にも貼られ、速度の向上や燃費節減に利用されているようです。
・美しい蝶やタマムシ モルフォ蝶の色の秘密
タマムシやモルフォ蝶の翅(はね)などが示す金属光沢を持つ色彩は、構造色と呼はれます。構造色とは、光の波長やそれ以下の微細構造によって発色する現象です。そのもの自身には色がないけれど、その微細な構造によって光が干渉するため、色づいて見えるというもの。見る角度に応じて様々な色彩が見られます。色素や顔料のような光の吸収による発色ではないので、色あせの問題がありません。このように、生物の構造色の発現を利用した材料開発が行われており、発色繊維に使用されており、美しい布地が実現しています。
・モスアイ(蛾の目)構造から
携帯電話やノートパソコンなどの表示画面に組み込んで、光の反射率を極力抑えて「映りこみ」をなくす反射防止フィルムは、蛾の眼を模倣した無反射フィルムのアイデア。樹脂製フィルムに「モスアイ(蛾の目)構造」と呼ばれるnmオーダーの微細な構造を精度よく形成することで、滑らかに光が透過するようになり、光の反射を抑えることができるそうです。
・ヤモリの指はなぜくっつくのか? ヤモリの指を模倣した接着剤
ヤモリは指先から粘着性の物質を分泌していないのにもかかわらず、垂直な壁を登り、天井をはうことができるのは不思議です。実は、ヤモリの指先にはラメラと呼ばれるひび割れ構造があり、その内部には数十万本の剛毛の先端は数百の枝毛に分裂し、個々の枝毛の先端はとても小さなナノスケールの皿状の構造になっています。指先の小さな構造と壁の間に働く力でくっつきます。ヤモリの指のように繰り返し利用が可能で粘着剤フリーの吸着テープなど、フィルムの研究が活発に行われています。また、壁面を移動できるロボットも開発されているようです。
その他・・・まだまだいろいろな分野で「バイオミメティック」が進んでいます。今後、様々な研究機関、大学、博物館などの研究者や企業が広く総合的に関わり、よりいっそう興味深い成果が出てくることでしょう。生物から学んだ技術で作られた、多くの身近な製品に囲まれる日も近いかもしれません。