2010-04-01

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クロマグロ絶滅危惧種指定論議の『その後』

クロマグロ,絶滅危惧種指定を回避

 近年資源量の落ち込みが心配されている,大西洋・地中海産のクロマグロ。西ヨーロッパのモナコ公国は昨年10月,大西洋のクロマグロをワシントン条約付属書Tに記載する,すなわち絶滅の恐れのある種に指定して,国際的な商取引を禁止することを提案しました。

 今年3月,中東,カタールのドーハで開催されたワシントン条約の締約国会議の主な議題のひとつが,この提案を採択するか否かでした。
 私たち日本人は,世界的に見ても有数のマグロ消費者であり,クロマグロについては全消費量の約6割を大西洋・地中海からの輸入に頼っています。クロマグロの国際商取引が禁止され,輸入することができなくなれば,クロマグロは日本人の食卓から消えないまでも遠いものになるであろうことは想像に難くありませんでした。
 これに対して日本は,クロマグロ資源の減少自体には同意する立場を取りながらも,大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)による資源管理を継続し,漁獲量を制限することによって資源の回復は可能な筈だと主張して来ました。しかしモナコ側はICCATの漁獲制限を超えた密漁が横行しているとして,資源ではなく野生動物として,ワシントン条約で保護を訴え続けてきました。

 モナコ案にはアメリカやEU諸国が支持に回るとの前評判もあり,反対派の日本の立場は厳しいのではないかとする見方も広がっていました。
 しかし採決の結果は賛成20票に対して反対68票,棄権が30票(票数は水産庁HPによる。以下同)と大差で否決,取引禁止までに1年間の猶予期間を設けるとしたEUによる修正案も,賛成が43票に対し反対が72表,棄権が12票で同じく否決されました。

 クロマグロの国際取引の禁止はひとまず回避されましたが,クロマグロの資源量が持続的な利用に堪える状態だと国際的に認められた訳ではありません。
 今後も引き続きクロマグロを利用し続けることを望むのであれば,日本はICCATの中で,一層主導的な立場を発揮し,密漁などの不正な漁獲・取引を防止するために積極的に取り組んでいく必要があります。
 赤松農林水産大臣は3月25日に談話を発表し,ルールに従っていないと思われる漁獲物は一切輸入しない,蓄養に頼らない完全養殖技術を普及・定着させるなど,今後日本が取り組むべき幾つかの方針を示しました。
 私たち消費者に対しても,漁獲制限や禁漁期間への理解や協力が求められています。食べたい時にいつでもマグロを食べられるように。今後とも情勢を注意深く見守って行きたいところです。

写真:クロマグロ漁(Wikipedia,Credit: Kotarokurosawa)

より詳しく知りたい方のために
ホットニュース『クロマグロは絶滅危惧種?』