2010-04-01

あのニュースは今? ― 変わり続けるニュースを追って


新潟のトキ,上野のパンダ…動物たちの『その後』

放鳥後初の自然産卵か?放鳥トキ2世誕生に期待

 新潟県佐渡島で昨年と一昨年に放鳥され,野生復帰が目指されているトキ。今年3月初めごろから,放鳥されたトキのうち一部の個体がオス・メスのペアになり,他の個体から離れて2羽だけで行動している様子が何度か報道されてきました。
 くちばしでつまんだ木の枝を渡し合う『枝渡し』やオスがメスの背中に乗る『偽交尾』などの求愛行動が観察されたとの報道もあり,巧く行けばこのままつがいになるかも知れないとの期待が高まっていました。
 
 環境省は3月29日,2008年秋に放鳥された3歳のオスと2009年の秋に放鳥された1歳のメスがつがいとなって佐渡市内に巣をつくり,産卵した可能性が高いと発表しました。卵の存在を確かめた訳ではありませんが,オス・メスが交代で巣の上に座り込むしぐさを見せていることから,卵を温めているのではないか,と解釈できるとのことです。
 抱卵期間は約26〜28日(佐渡トキ保護センター)とされており,巧く行けば4月の下旬にはヒナが見られるかも知れません。放鳥個体同士からヒナが誕生すれば,野生復帰に向けた大きな1歩になります。
 他にも2組のペアで巣作りが確認されていますが,こちらでは産卵の気配は見られないようです。

 3月上旬には次回の放鳥候補として順化ケージに移されていた個体がテンに襲われ,うち9羽が死亡しました。環境省はこの4月にも再発防止策をまとめた上で,残った個体で引き続き秋の放鳥を目指して行くとしています。


2011年,新たなパンダがやって来る?

 2008年4月,上野動物園で飼育されていたジャイアントパンダ(愛称リンリン,オス,当時22歳7ヶ月)が死亡。1972年10月のカンカン・ランラン来日以来,およそ37年に渡った上野のジャイアントパンダの歴史が途絶えました。
 国立科学博物館では,上野動物園からリンリンの遺体の寄贈を頂き,はく製標本・骨格標本を製作しました。このはく製と骨格を,上野動物園でこれまで飼育されていた他のジャイアントパンダたちと共に公開した,NEWS展示『初公開!はく製リンリン』(2008年12月〜2009年4月)には,非常に多くの方々のご来場を頂きました。
 1頭1頭のはく製を見比べながら,顔つきや体つき,模様の色の濃さなどの違いを観察されていた方。カンカン・ランラン見たさに上野動物園で行列を作り,見られたのは後姿だけだったと思い出をお聞かせ下さった方。小さなお子様を腕に,本物のパンダを見せるのは初めてなんです,と仰っていたお母様。 筆者が展示室でお会いした方はごく一部ですが,皆様のパンダへの関心の高さ,リンリンへの哀惜の想いが伝わって来ました。

 今年2月,石原慎太郎都知事は記者会見で,中国からジャイアントパンダのオスメス各1頭をレンタルし,2011年の早い段階で上野動物園で飼育を始めると発表しました(東京都HP,石原知事定例記者会見録)。繁殖を含む共同研究を目的に,年間95万ドル(約8500万円)を支払うことが条件です。
 レンタル費用が掛かること,希少動物であるジャイアントパンダを生息地から連れ出すことなどに対しては反対意見もあります。上野での繁殖や,2008年5月の四川省の大地震で被害を受けたジャイアントパンダ生息地や保護施設への支援に繋がるという見方もあります。
 いずれにしても,やって来る2頭のジャイアントパンダがリンリンやそれまでの個体同様,多くの人々とって,動物への興味・関心を掻き立てる存在になってくれることは間違いないでしょう。

写真:『初公開!はく製リンリン』で展示されたリンリンのはく製。
※このはく製は現在開催中の『大哺乳類展 陸のなかまたち』でも公開しています。